a holiday
「ちーっす。」
やはりタイミングの悪いひよこ頭。
「留守だ。さっさと帰れ。」
「ちょっと待って!安心してください、大佐に用がある訳じゃないんで。エドちゃんと来ましたか?」
「・・・・・・ハボック。何故お前が知っている。」
自然と声が低くなる。
「いや、朝司令部にふらりと来て大佐の家を聞かれたんですけどね。送っていってやろうにも手が放せなくて仕方なくここを教えたんです。何でも急用だったみたいなんでちょっと気にかかりまして。」
「・・・・・・たまたま通りがかったと言っていたが?」
「あれ・・・?」
なんなんだ、この噛み合わなささは。
微妙に漂う緊張感。
こういうときは逃げるに限る。
「えーと。じゃぁ、まあ無事に着いてるならいいです。しっかり休んでください、俺はこれで。」
「まて。あの子供がいて休めるわけがなかろう。」
きびすを返して逃げ去ろうとする男の首根っこを掴んで引き止める。
「連れて帰れ。」
「でも、せっかく逢いに来たんでしょうから相手してやってくださいよ。」
「私ではなくて文献だろう。貸し出してやるから荷物ごと運んでやれ。」
「嫌です。」
「なぜ。」
まったくこの人は。
「アンタに会いたくて口実作って来てるんでしょうが!」
「何言って・・・・?」
「そのままの意味ですって。」
「そのまま?」
傍から見てれば解りやすいが当の本人には全くと言っていいほど自覚がなかった。
しかし、ハボックにはわざわざそんな事を教える義理はなく。
普段の恨みもこめて。
「本人に直接聞いてみたらどうですか。」
ハボックの言葉を理解できないまま、書斎に向かい背を向けたまま座り込んでいる子供を暫し眺めていた。
たまたま通りがかったという嘘。
大して意味のないだろう文献を読みに、わざわざ家まで来たらしい。
それが口実?
そのために嫌々家事労働までするのか?
知らずほころぶ口元。
さて。
どうしよう?