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終焉無き輪廻

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※本文には死・グロイ表現が含まれます。
※登場人物は、リボーンの「六道骸」という設定で描いていますが、オリジナルに見えないことも無いです。

以上を踏まえた上での閲覧をお願いします。

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月の美しい、闇のよく冴えた夜だった。
見事な曲線を描く下弦の月に見下ろされ、緑の茂った空間は、奇妙なほどに静けさを保っている。

そこに不躾に響く足音はふたつ。
足音の消し方さえも知らぬこどもと、気配を察することすらおぼつかぬほど巧妙に歩みを進める男のものと。

先ゆくその足取りは、長い尺に追いつこうと早足になる少年を気遣うようにゆったりと遅く。
着いてきていることを確認するためだろう。
真っ直ぐに前を向いていた視線が、不意に背後をちらりと掠める。
黒く仕立てられたスーツを着込み、その髪の色も艶を含んで闇に溶けるが如く黒い男の、
白い肌と異彩な瞳だけが目印となって歩みを導く。
その姿を見失わないようにと、少年は懸命に視界を覆わんばかりの野草を掻き分け、
段々に険しくなる獣道の向こうを目指した。


「…此処でいいでしょう」


ふと、開けた荒野に出た途端、視界の広さとその明るさ--------
そして何より、不意に発せられた彼の声に驚いた。
呆然と立ち尽くす少年に向かって、仕草は優雅に。
改めて晒された貌は、青白い月明かりに照らされて、ぞっとするほど美しかった。


「君は解っているのでしょうね。
私がかつて、そうだった様に」


ざわざわと風が凪ぎ、静寂だった世界に音が蘇る。
同時に、雰囲気に呑まれてはりつくようだった少年の喉には空気が入り込み、
圧迫と共に、閃きのような衝動が走った。
(ああ、知っている。)
瞬きと共に零れた涙が、頬を伝っていく。

それを認めて、異彩な瞳がゆるりと細まる。
ゆったりと掌がその黒服に伸び、懐から取り出された鈍色の銃器を月光の元に翳した。
輝きを殺し、しかし闇夜に浮かぶような輪郭を視線で追いながら-------
銃口を米神に押し当てた男の所作を、少年はただ呆然と見ていた。


「『Arrivederci』」


重ねた言葉のその終わり、男が微かに微笑んだ。
引き金を引く指先の温度。その冷たさを、少年は確かに知っていた。


作品名:終焉無き輪廻 作家名:しぐま