終焉無き輪廻
「…ああ、」
意識の浮上した瞬間、ちりりちりりと鳴く野虫の声が耳を掠め、
手足の感覚を思い出した身体が、ゆっくりと動き始める。
ぎこちなく立ち上がっても尚、低い目線に微かな違和感を覚える。
落ちた視線の下で、ゆるく握られた拳が映った。
--------------とても小さい、子供の身体だ。
一通りに体に異常が無いかを調べ、やがて歩むことにも慣れた足で、
目の前で倒れ伏している男の身体に近づいた。
先ほどまで、自分のものであったそれ。もう、事切れてしまったそれ。
その肩に足爪をかけ、蹴り上げて仰向けにする。
虚空を仰ぐその瞳の片方に掌を伸ばし、力任せに抉った。
ぐちゅ、という生々しい音と共に、血管と血液を纏った眼球を取り出す。
同様に自分の視界の片方も抉って、無理やりに捻じ込んだ。
ぼたぼたと指先を伝い落ちる血に、やがて腕や服を汚しながらも、どうにか布を固定するように巻きつける。
傍らに放り出された銃器を拾い上げ、男の体は放置して、また獣道を遡った。
虫が鳴いている。
風が凪いでいる。
掌の中の重みは、鍛えられていない腕の中ではずしりと重い。
己と、月だけが見ていたこの変化を、一体誰が知れただろう。