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「民が、」

　不意に、簾の向こうからか細い声が聞こえた。

　「王耀、・・・？」
　「民が、聞仲、…ぶんちゅう」

　急いで払いのけた簾の向こうにいたのは、子供であった。齢は武成王の末子と同じぐらいに見える。先程自分がのせた冷水を絞った布に右手をのせ、喘ぎ喘ぎ、苦しそうに息をしながら言葉をこぼす。
　一体誰がこれを「殷」だと、この国だとわかるだろう。

　「たみが苦しんでるある。泣いてる、ある。今も、いまも、もがいてるある」
　「王耀ッ」
　「聞仲、聞仲、聞仲・・・・」