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近未来予想図

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 「くお~~らぁ!!獠ぉぉ天誅じゃぁ━━━!!!!」
  

  
 砕かれたドアに仁王立ちしていたのは・・・どうやって追跡して来たのか、やはり相棒の香だった。
 「神妙に縛につけぇ~い。家計がかかっとんのじゃしっかり働かんかい!」
 と、芝居がかった台詞のあと、妙な雰囲気にさすがの香も気がついたようで毒気を抜かれた・・・。
 『あれ・・・?なんか緊迫した空気。もしかして、やばいところに来ちゃった?』
 その隙を見逃さずに男はすばやく香を捕獲した。



 「お前ら、何者だ?最初から怪しいと思っていたんだ・・・。警察じゃなさそうだが。」  
 状況が飲み込めていない香は、それでも自分が捕われていては獠が動きずらいだろうと己の浅はかさに叱咤しつつ体全部を使ってもがく。
 「まぁ、サツじゃぁないのは確かだな。」
 この場に似つかわしくなくのんびりとした口調で返す。
 僚の態度に苛立ちを覚えた男は、おもむろに手直かな引き出しから中に液体の入った注射器を取り出した。
 「君は運がいい、試してみるかい?」
  

 パ━━ンッ
 答えを聞く間もなく、香の腕に針を埋め込もうとしていた男の手ごと鉛の玉が貫く。
 もちろん隠し持っていた愛用の銃で。
 その様を見た男は驚愕した。
 紛れもなく目の前の男が所持しているのはPython 357マグナム。


 「・・・・バカな・・・そんなはず・・・・なぜだ?」
 男が言いたいのは大体こういうことだろう。
 裏の世界NO,1のCityhuntarと呼ばれるスイーパーが、一個人の自分に銃を向けていること。
 彼が生業とするのは大物政治家やヤクザがらみのはず・・。
 たかが、色町でのいざこざにかかわってくる話なんて聞いたことがない。
 「・・・・まったく、本来ならこんなしけた事受けないんだが、ちょいと野暮用ってことでなぁ。それに、今俺の逆鱗に触れたんだ覚悟はいいだろうな・・?」



 遠くからでもわかるサイレンの音・・・。


 非合法の薬剤を精製していただけでなく、他人に投与していた事実。 
 個人ごとに症状を克明に記録されているファイルも見つかり、その中で見知った彼女?の部分だけ廃棄した。
 せめて家族にさらされる前に・・・・。


 事後報告というわけでもないが、ことの顛末を話したママは心付けに一本のボトルを香に手渡した。
 依頼料の代わりらしいが。
 閉店までこき使われそうになったのを香をたてに逃げ出して来た。
  


 「それにしても、獠。一言ぐらい言ってくれても良かったんじゃなぁい?」
 いくらなんでも情けない姿を冴子の前でさらすわけにも行かず、チャッチャと姿をくらませた獠と香。アパートへの帰り道に素朴な疑問を口にした。
 表情の読めない顔をして煙草を口に銜えたまま答えない。
  

 ━━━そんな奴許せないとかいって自分から首突っ込んで来るに決まってるってぇのに、話せるかってんだ。・・・・いい加減俺もヤキが回ってるよな。

 
 「そしたら、獠に迷惑かけなくても良かったのに。」
 ボソリとつぶやく彼女のけなげさが少しだけ切なかった。
 肩を抱き寄せようとして躊躇する。今の己の格好に我に返ったのだ。
 「・・・・悪かった。」
 珍しく素直に謝罪する隣を歩く男に驚き視線を向ける。
 クス。
 「いいわ。珍しいもの見せてもらったし。リエカママに感謝しなくちゃ!」
 「冗談じゃねぇ!二度とするもんか。」
 「じゃぁ、今後はツケで飲み歩くのを控えることね。」
 「ふん。言われなくっても・・。」
  

 お前が相手してくれれば・・・・・と、続く言葉を飲み込んだ。

  

 唐突に思い出す。
 動悸が早くなってきた。


 このままアパートへ帰って・・・。
 大丈夫だろうか?


 家を出る前と変わっていない香の服装。・・・・風呂にまだ入っていないということだろう。
 つまりはまだ、悪戯の後が残ってる・・・だろう、多分。
 ゴクリ。   
 やばい、ヤバイだろう!
 なんか変なこと口走った記憶があるし、なんだか香の雰囲気も色気が漂って見えるし、このまま家に入って二人だけになったら・・。


 埒もない思考に囚われている間に、住み慣れた住居についてしまった。
 

 「・・・・お疲れ様、僚。お風呂入ったらコーヒーでも入れる?」
 そんな風にふんわり微笑まれたら。


 もう止まらないよ。


 「ああ、でもコーヒーよりさっきのボトルがいいな。」
 「・・・そうね、じゃぁ準備しとく。」
 キッチンに向かう途中で、足を止め振り返り。言い忘れていた、と・・。 
 「お帰りなさい・・・・獠、怪我なくてよかった。」
 取り残された俺は。
 情けないことにしばらくほうけたように身動きが取れなかった。


 その表情は反則だろう?



 ・・・・それから、あんまり記憶がない。

 翌朝目覚めて手に残る感触は夢ではないらしい・・・。


 後悔はしていない。
むしろ、渇望していた。
 
 預かり物だと。
 彼女がひとり立ちできるまでの間。
  
 彼女の強さ、弱さを知るたびに。
 どうやったら手放さないで済むかと。

 もう少しで自分を起こしに来るであろう彼女を待つ間に、今日一日のプランを立ててまずどうやってからかおうかと意地の悪いことを考えていた。

作品名:近未来予想図 作家名:藤重