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近未来予想図

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 「はっ、こっちが断れないように仕向けたのはそっちだろうが!言っとくけどこんなことは今後一切御免だからな!!」
 ・・・・普段ならば、脅しとして十分通用するような台詞なのだが。
 今のこの男の格好は、このゲイバーにあって一遍の違和感もかもし出していない。きわめて普通の?ニューハーフの格好であった。
 鍛え上げられた筋肉はきらびやかな衣服に覆われているがゆえに迫力を増しているようだ。   
 しかしそんな男に怯む様子もみせないこの店のママ。
 「あ~ら、そんなこと言ってもいいの??それじゃぁ、ツケをチャラにするって話はなしって事で!・・・今すぐ2、503、497円(延滞料込み)払ってもらおうかしら。」
 頬に手を添えてにっこり営業スマイル。
 敗者は陥落するしかなかった・・・。




 くっそー!こうなったら、さっさと厄介ごと片付けて帰るぞ━━━!!
 

 獠の心の叫びはむなしく、只々事態の好転を望むだけだった。
 「ほらほら、獠ちゃん、もうすぐ開店するんだからいつまでも引きこもってないで手伝って頂戴な。」
 いつまでも控え室から出てこようとしない男を持ち前の怪力で引きずり出す。
 と、そこに最初のお客が来店した。
 「いらっしゃ~いvvまぁ、今日も来てくださったのね。」
 変わり身の速さはさすがプロといったところだ。
 深いため息とともに腹をくくる。


 「はぁ~~いvv新人のミリアムでーす。よ・ろ・し・く☆」
 程よくアルコールも回り、持ち前の軽さで乗り切り、なぜか優男風の冴えないサラリーマンにもてる獠。
 ━━━なんで、俺こんなことしてなくちゃいけないんだろう?
 日ごろの行いをほんの少しだけ後悔した。



 「・・・・獠ちゃん、ねぇ。あいつよ。あそこの奥のボックスに居る茶髪の奴。」
 さりげなく耳打ちをするママ。
 完全に自我を手放しかけていた男に生気が戻る。
 「漸く、お出ましか。待ちくたびれていい加減クセになりそうだっだぜ。」
  

 ━━━そう、ゲイバーでタダ働きは表向きで本来の目的は、ある男を始末することだった。
  

 その男は表向き金融業の重役という立場らしいが、実のところ本業はと言うと、怪しげな
 薬を自作して売りさばいている。ヘロインなどのダウン系ではなくもっぱらハイになるアップ系らしいが、それでも多少の常習性はあり、五感も鈍くなる。試飲して暴れまわる客も少なくないらしい。
 どちらにせよ、ガキのおいたにしちゃぁ性質が悪すぎると言うことで俺にお鉢が回ってきた。
 警察に頼むにも裏事情を少なからず抱えたこのあたりの連中は痛い腹を探られる訳にも行かず、実際この男の薬のせいで死人も出たらしい。

 「とってもいい子だったのに、あの男に妙に入れあげちゃって、いろんな物を飲まされていたみたい・・・。最後はもう、体中の神経がボロボロで・・筋肉もなくなってて廃人同然だったわ。」
 そのことを責めたママに、その男は何の感情もなさそうに『そいつが望んだ事だ』と、のたまったらしい。
  

 こういう輩には反吐がでる。
 俺は正義なんてもの持ち合わせちゃ居ないが、お仕置きは必要だよな。



 「え~?坂本ちゃんて、薬剤師なのぉ??」
散々おだてられて、気分良くなっている男はアルコールの効果もあいまって簡単に口を滑らす。
 「もと、ね。今じゃぁしがないサラリーマンだよ!僕の研究が上手く行っていればガンだって治せたんだ。それなのに、僕の研究を理解するどころか排除しようとして・・・。まぁ、そいつらには正義の鉄鎚を食らわせてやったがね。」
 クックッ。
 ヒキガエルが鳴いたような笑い方がこいつの中の狂気を現しているようだ。
 「・・・ふーん、そうなんだ。今でもその研究ってしているの?ミリアムってばインテリジェンスを感じさせる人ってタイプなんだわ~。」
 もうめいいっぱい色気を出そうとして失敗している。
 両手を組んで祈るようにして小首をかしげてスマイル。
 「そ、そうなのかい?じゃ、今度僕の研究室兼部屋へ来るかい?」
 「そんなつれないこと言わないでよ、今から行きましょv」


 ━━━なんだかいとも簡単に獲物は引っかかってくれたらしい。


 


 「こんばんわ~・・・・獠います?」
 防音の利いた重いドアを恐る恐る控えめに開き、尋ねる。
 なんとなく気になって様子を見に来たというところか。
 「あら、かおりちゃん!ウチで働いてくれる気になってくれたのかしら~?ここはいつでも大歓迎よー。」
 「ちっ、ちがいます!獠がちゃんと働いているかどうか見に来たんです。」
 からかわれているのをわかっていて、それでも大真面目に否定する所が素直でかわいらしい、ボーイッシュな彼女。
 マフィアのボスでも敵に回すことを恐れているあの男を意図も簡単に操縦出来る唯一の存在。
 あの女と見れば見境のない男が唯一手を出して・・いや出せないでいる。
 傍から見ればとうに、関係を持っていても不思議でない二人だと言うのに。
 本人に聞くとそれはもう大仰にそんな対象ではないと否定してはいるが・・・
 実のところ言葉の端々にゆるぎない愛情を感じさせるのだ。
 「あら、残念。獠ちゃんついさっき、お客さんと・・・」
 「あんにゃろぉ~~~やっぱり、逃げやがったな━━━!!まっててリエカさん、今連れ戻してくるからっ。」
 最後まで聞かずに、お得意のハンマーを抱えて駆け出していってしまった。
 ・・・・どうやったら、あんな華奢な身体であんな重そうなものを持ち上げられるのかしらね?やっぱり、愛の力かしら。
 この後どういう展開になるのかひそかに好奇心が駆り立てられている胆の座ってるこの道10ン年のリエカママだった。




 一方ターゲットの男の部屋で一服しているミリアムこと冴羽僚。背中に一瞬ゾクリと悪寒が走った。
 なんだ・・?この馴れ過ぎた感覚は・・・。もしや、香が様子見に来てサボってるなんて勘違いして追っかけてこないだろう・・・な?
 悪い予感程的中するもので。



 「どうだい?僕の研究所は。すごいだろう?」
 「ええ、そうね。どこかの会社みたいにいろんな機械がいーっぱいね。」
 薬品の棚には入手困難な劇薬と髑髏マークでも付いていそうな品物もある。 
 入手ルートをたどればそれなりの奴が出てきそうだな。
 さりげなく、怪しそうな棚に近づいてイヤリング型のカメラで写しておいた。
 「ね、コレだけいっぱいお薬あったら、すぐに女らしくなれる薬でも作れちゃうんじゃなぁい?」
 冗談で言ってみたことなのだが。 
 「・・・・君は勘がいいんだねぇ。試してみるかい?」 
 そういって、取り出したカプセル状の薬を翳してニヤリと笑う男には紛れも無く狂気が宿っていた。
 そこに。男の表情がわずかに険しくなり、獠も気配を察していたが、まさかと思いたかったと言う方が適切だろうか。

  
 ドッカ━━━ン!!
 砲撃でも受けたかのように厚手のドアが撃破された。
 

作品名:近未来予想図 作家名:藤重