バースデー
今、この時間、自分の誕生日である今日この日ならゆっくり話すことだって出来るはずだ。
「ちょっと俺、探してくるよ」
アメリカはイギリスにそう言って足を踏み出そうとする。
しかしそこで、突然なにかが風を切る音が聞こえた。
咄嗟に体を強張らせた途端、耳元でパンパンパン!! と何かが破裂する音が聞こえる。
アメリカも、側にいたイギリスも、シーランドも、それだけじゃない、周囲の人間みんな突然の破裂音にアメリカへと視線を送った。
「わぁ! 綺麗です〜!」
真っ先に声を上げたのはシーランド。
まさか油断させた所で襲撃かと反射的に思ったアメリカが、その声に空を見上げると、割れた風船から金銀輝く紙吹雪と色とりどりの花びらが舞い上がるのを見た。
「これは……」
「随分と趣向に凝ったプレゼントだな」
送り主がわかっているだけにただ唖然と驚くアメリカとは違い、ハラハラと落ちる花びらを手に取りながらイギリスは目を細め、シーランドは楽しそうにはしゃいでいる。
そんな2人の姿を確認してからアメリカはようやく硬直していた指先を動かして、花びらに手を伸ばした。
「……ああ、ホントだね。綺麗だ……」
いつもは意見バラバラな自分達だけど、綺麗な物に感動する気持ちは一緒。
(倍返しにされちゃったじゃないか)
アメリカは風船を割ったナイフが飛んできた方角を見つめ目を細める。
来年は覚えておけよと心の中で呟きながら、イギリスの肩に落ちた花びらと、シーランドの帽子に乗った紙吹雪を指で摘み、アメリカは笑った。
どこからか聞こえるハッピーバースデー。
今日くらい、お互い笑顔でいても良いだろう。