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「あ!ラテルラテルラテル!」
ネコ型異星人の声が後から聞こえる。海賊課・・・もとい、対海賊課一級刑事、ラテル=サトルはその声を聞くと、足を速めた。
「ラテルまて!待てってばぁ~」
ラテルは、後から聞こえる相棒の足音と、声の大きさから自分との距離をすばやく頭の中で計算。
これから進むべき進路を決定した。
角を曲がると同時に全力疾走。
廊下を歩く職員を右に左にとたくみによける。
そこに、角を曲がったらしい相棒の声が聞こえた。
「わ!ラテルまってよ!」

ラテルはラジェンドラが停留している格納庫に飛び込むと、作業をしている人たちを今度は突き飛ばしながら走り、ラジェンドラのラダーを駆け上り、指示を出す。
「ラジェンドラ!ラダー格納!急げ!」
「ラジャー。」
どこからともなく、ラジェンドラが男性の声で即答する。
「どうしたんですか?ラテル。出動の命令は受けていませんが」
ラテルはその言葉には答えずに、閉じていくラダーを睨んでいた。
しかし、あと20センチというところで、黒い物体が船内に飛び込んだ。
渋い顔をする彼の横でネコ型異星人のアプロが笑う。
「ニャハハハハ。ラテルってばいじわるなんだから。」
「なにがいじわるなんだから・・・だ!」
唸るラテルの横でアプロは犬が水を払うように、身体を震わせた。
「二人とも、私をあなたたちの遊びにつき合わせるのはやめてください。」
ラジェンドラの声が船内の、彼らに一番近いスピーカーから出力される。
「なんだ、ラテル。俺と遊びたかったのか?」
「なんでそうなるんだ!このバカネコ!」
ブリッジに向かいながら言うと、アプロもその後を小走りについてくる。
「俺、ネコじゃない」
「あぁ、そうだな。猫はもっと可愛いものだ。お前は化け物胃袋だ」
「ラテル、口がさえてないぞ」
「お前と口をきいてると、どんどん俺の言葉のレベルもさがっていんだよ」
確かにいつもより、さえていないラテルの言葉に、ラジェンドラが少し心配そうに声をかけた。
「機嫌でも悪いのですか?」
ラジェンドラは、彼らに一番近いスピーカーを選んで声を出す。
「なんでもないよ」
心なしかムスっとした彼の顔をみて足元のアプロの眼が輝く。
「俺、知ってる」
「言うな」
少し早足になったラテルをアプロが半ば駆け出しながらついていく。
「どうしたんですか?」
のけ者にされるのがイヤなのか、少し詰問調にラジェンドラが声をだす。
「言うな。アプロ」
「ラテルってば、また振られたんだ」
「言うなといったろう!この!」
足元の黒猫を蹴り上げようと、ラテルは足を振り上げたが、その足をひらりとアプロはかわす。
「この!よけるな!」
ラテルは、腰を落として低い位置にいるラテルに殴りかかるがそれもひらりとかわされる。
頭にきたラテルが腰の大型レイガンへ手を伸ばすとラジェンドラが制止する。
「やめてください!二人とも。本当に二人とも遊んでばかりなんだから。チーフはどうして私をこんな二人と・・・」
ぶつぶつと話だしたラジェンドラに気勢をそがれ、二人はまただまってブリッジへと向かいはじめる。

あきれたことに、ブリッジに入ってもまだラジェンドラはぶつくさといっていた。
「そうだ。だから、私があなたたちと組まされることになったんですよね。考えてみれば至極あたりまえのことです。
 チーフは私が優秀だからこそ、あなたたちと組ませているわけですね。」
わざわざ音声出力する必要ないのに・・・アプロはそう思うが、同僚刑事が何もいわないので黙ってシートについた。
ラテルは、この対コンピュータ・フリゲート艦がこれでうっぷん晴らしをしていることを承知している。だったら多少言わせておいてもいいと思っている。
「お前には感謝しているよ。」
シートに背中をあずけながらラテルが言うと、ラジェンドラも満足げに言った。
「ありがとうございます。ラテル」
「お前もそう思うだろう?」
ラテルは隣に座った同僚刑事に話をふる。
「食いでがないのがたまにきずだけどな」
ネコ型異星人はそういってぺろりと前足をなめ毛づくろいをはじめた。
ラジェンドラは彼の言葉は聞かなかったことにして別の話を切り出した。
「ところで、どうして振られたんですか?」
「ラジェンドラ!!!」
終わったと思っていた話題をいきなり振られてラテルは大声をだしてしまった。
その様子がよほど面白かったのか隣のシートではアプロが腹を抱えて笑い転げる。
むくれるラテルに、ラジェンドラがすまして言う
「原因を知るということは大切なことですよ。ラテル。それを分析することで自分の非や相手の望んでいたことが分かるのです。違いますか?」
「ちがわないちがわない」
ラテルの気持ちも知らずに、笑いながらアプロがちゃちゃをいれる
「原因があって結果があるということです。その原因をしることが次につながるのです。
 これは、対海賊にしても恋愛にしても同じだといえます」
知ったかぶりしやがって・・・とはラテルは言わなかった。
そんなことを言おうものなら、機嫌を損ねるだろうし、延々とラジェンドラとの不毛な会話をするハメになる。
まったく、機械の機嫌をとる自分が悲しくなる。
「そうだぞ。ラテル。大体、あの女はよくなかった」
ラテルが横目で見ると、アプロはシートに背を預け、しっぽをぱたぱたと振っている。
「俺にマタタビをくれたし。うまかったけど、あれは猫の食い物だろ?俺、猫じゃないし」
「いい女じゃないか。お前にはマタタビだってもったいない」
「それにドブスだったじゃないか」
「お前の趣味が悪いんだ」
「そ・・・そ・・・そんなことはないぞ」
アプロはひょいと身体を起こすと、抗議するために身を乗り出した。
その様子を見るのも面倒というように、ラテルは正面を向いて続ける。
「大体、今回のことだってそもそもはお前が悪い。
 お前、海賊の返り血を浴びた身体で彼女に抱きついただろう。あれで彼女は卒倒しちまうし、あのあとそれがトラウマになって今も病院通いしてるってはなしだ」
だんだん、言いながら腹が立ってきた。
「お・・・俺」
「大体。お前は、意地汚すぎるんだ。何でも食い物とみりゃ・・・いや、食い物じゃない場合もあるが、すぐ飛びつくし、こわすし、かじるし。そうだ。俺が振られるのも、俺が薄給なのも・・・いや、そもそも、宇宙に空気がないのだって、地球で恐竜が全滅したのだって、海賊がいなくならないのだって・・・・・」
「ラテル」
調子にのって言葉を続けようとしたラテルをラジェンドラが静かに止めた。
「なんだよ。邪魔をするな」
「あまり、アプロをいじめないでください」
「俺がいつアプロをいじめたって?いじめられてるのは・・・」
「ラテル。」
興をそがれたラテルが隣のシートに目を移すと、さっきまでケタケタと笑っていたアプロがシートの上で頭をがっくりとさげ、耳までもぺったりとたおしてうなだれていた。
「お・・・オレ・・・オレのせい?」
そういいながら顔を上げたアプロの眼まんまるな眼からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちていて、ラテルはぎくりとした。
しまった。言い過ぎた。
内心、ラテルは動揺した。何のかんのといって自分を慰めようとしてくれていたのかもしれない。
罪悪感が心に刺さる。
作品名:無題 作家名:あみれもん