天使なんかじゃない
「なんだよー、早くしろよこの眉毛天使ー」
「うう、うるせえ! 眉毛天使とか言うなっ!」
急かされて慌てて腕をあげる。フランスのいうとおりの願いをかなえる気はない。ならばなんと唱えればいいのだろう。
フランスと彼女が早く別れますように? ――好きな相手の不幸など平気な顔をして願えるわけがない。
ならば、なんだ。フランスの菜園になっている野菜がすくすく育ちますように、とでも願をかけておくか。
期待してるのかただ楽しんでいるのかキラキラした瞳でこちらを見つめてくるフランスを見ていると、なんだかどうしようもなくなっていつもの掛け声とともにステッキを一振りした。
目に見える変化はないが、フランスはそれでいたく満足して「天使に保障してもらったんだ、これで彼女と俺も安泰だなあ」なんてのんびりつぶやいている。
安泰なのはおまえの健康だけだ、とイギリスは心の中で返事をしておいた。
END