二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

漂流をしている。

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

4

「よ」
ガンガンと窓を叩く音で目を覚まし、眼を擦りながらカーテンを開くと見慣れた髭男がいた。
「はやいな」
ふわぁと噛み殺せなかった欠伸を漏らしながら窓を開ける。
まあねと言いながら、奴は手馴れた様子で家と船をロープで括る。いつの間にか上手くなったななんてぼんやり思う。最初のころは俺がやっていたのにな。
「隣の人にさ、お前の話をしたんだ。そしたら牛乳持ってけって」
ほらと言われながら瓶に入った牛乳を手渡される。まろやかな白色。
今日搾りたてだから。昼にでも飲もうぜ。言われてこくり、頷いた。

これがいつもの。こっちは生鮮だからすぐに食べろよ。あとこれは今日食べる分。たまには美味しい料理食わせてやるよ。あと、こっちが茶葉な。最後にこれ、緊急だってさ。書類。
木箱やら封筒やら次々に手渡される。それを受け取り置くべき場所へ。
全ての荷を降ろすと窓を乗り越えて部屋に入ってきた。そんな奴を横目で見ながらデスクへ向かう。万年筆を取り出しながら、書類に目を通す。
なんだか久しぶり。お前の部屋全然変わってねぇのな。と笑う奴に、書類から目を離さずばーかとかえす。2週間前に来たばっかだろ。そうそう変わるものか。
はいこれ、とサインしたばかりの書類を渡すと中身を確認してうんと笑った。急かしてごめんね、ありがと。
「じゃあ美味しい昼食作ってやるから!ちょっと待ってろよ?」
髪の毛をゆるく括りながら部屋を出て行った。きっとあともう少ししたら美味しそうなにおいがこの部屋にも届くのだろう。

風見鶏にくくりつけたトリコロールが目印。
それを見つけたら適当に要るものを見繕って持ってきてくれる。
もし彼がトリコロールを見つけなかったらどうなるのだろう?と思うことがあるけれど、それだけだ。
今日は上手い飯にありつける。早く仕事を終わらせてしまおう。
窓から身を乗り出して波に浮かぶ瓶を拾う。奴の乗ってきた船が見える。
ああ、もし今ここで俺が船に乗ってしまったらあいつはどうなるのだろう?
いつも思う。けれど、それだけだ。
瓶を抱え部屋に戻り窓を閉めた。
乗る者がいない船がゆらゆらと揺れていた。
作品名:漂流をしている。 作家名:ouoxux