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運命論

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「三蔵の、こと……み、見つけよ、うと……思ったッ」
「どういうことだ?」
「いつも、三蔵、こう、やって……ッお、俺のこと見つけて、くれるっ、から」
 ヒグヒグとしゃくりあげながらも必死にしゃべる悟空の言葉に耳を傾けて、その意味をやっと把握したとき、呆れても物も言えなかった。
 ようするに、悟空はこう言いたかったらしい。
 いつかもし、三蔵が先にいなくなってしまったときに自分が三蔵を見つけ出せるようになりたかったと。そのときのために今から準備をしようと思ったと。
 生まれ変わった三蔵がたとえ自分のことを覚えていなくても、見つけ出して迎えに行くために。
「……バカか、お前」
「ひ、ひでぇ……、俺、すごい、真剣なんだ、ぞッ」
 酷い酷いと叫ぶが、その右手は法衣を握り締めたままだ。そんな必死な姿に、もう呆れて力が抜けた。
 コイツはどうして気づかないのだろう。
 めんどくさがりで排他的な三蔵が、毎度毎度こうやって悟空を迎えに来てやることの意味に。
 不安定なコイツを寺院に残すことが心配で、わざわざ悟浄や八戒に預けた、その理由を。
 そんなことも解らないからバカだと言うんだ。


『神様が引き合わせてくれたんじゃないよ』titleby subtle titles

 これはそんなお綺麗な運命なんかじゃない。


END
作品名:運命論 作家名:ことは