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りりなの midnight Circus

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 だから、エルンストは。最後まで貫き通すこととした。辛い、彼を持っても辛い演技をしなくてはならなかった。
「あなた方は本当にそう思っておられるのですか?」
 エルンストのそのもの言いに、二人は「えっ?」と言って面を上げた。
 エルンストの表情には、何の感情も浮かべられていない、まるで氷の能面をかぶせたかのような表情が浮かべられており、二人は背筋を振るわせた。
「この世界にいたずらに消費される命などあってはならない。しかし、俺は殺した。この年になるまでの18年間で、俺は既に60名を超える命を奪った。そうして、守られるものがあった」
 エルンストは二人の表情を順番に眺めた。その表情に浮かべられたものは何だったのだろうか。
 恐れ、怒り、異形を見るような表情。それらがない交ぜになって、なのはとヴィータはただ口を噤むしかなかった。
「必要なのですよ。俺たちのように部品として最大限有効活用される人間が、俺はその一つでしかない。多くある部品の中の一つでしかない。あなた方がのびのびと空を駆けめぐっている間にそういうモノは多く消費されていっている。数週間前に死んだ俺の相棒のように。だが、それはただそれだけのことなんだ。そして、俺もいつかはその中の一人になる。ただ、それだけのことなんだ」
 なのはとヴィータは何も言えなかった。多く散っていった命。自分たちは自分が思うものの多くは守ることが出来てきたと思う。親友、仲間、愛する人、家族。失ったものも多かった、それでもその多くは取り返せたと思う。
 しかし、エルンストは。自分たちよりも遙かに年下である彼は、どうしようもないところで多くのものを奪い去られてきていた。そして、いつか自分自身もその中の一つとなることを受け入れている。
「どうして、どうして君は……」
 なのはの頬に一筋の雫が下りた。
「そうあることを、自分で決めたからです。そうあることで果たされることがある。それならば自分の命にも価値がある。そう思えたからです」
 エルンストは答えた。自分の命は失われることで価値があると。そして、それを自分で決めたと。
 二人はなにも答えられなくなった。無理だ、失うことを当たり前として生きてきた彼に、彼女たちが何を言ってもその決意を揺るがすことが出来ないと確信してしまった。
 話は終わった。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪