りりなの midnight Circus
ヴィータも黙ってはいなかった。それまで、彼女たちが胸に秘めついにここまで至るまで打ち明けられなかったことを口にしている。
「…………何も言うことはありません…………」
それでもエルンストは話すわけにはいかなかった。おそらく、話してしまえば二人を巻き込むこととなる。いや、既に巻き込まれているのであろうと推測できるが、それでもその最低限を守りたかった。
おそらく、それはエゴなのだろう。しかし、彼女たちの腕が自分のように血に汚れる姿を彼はどうしても見たくはなかった。
「ふざけん……」
ヴィータは激昂して、側の机を叩きそうになった。
「ふざけないで!!!」
しかし、それはなのはの叫びに打ち消され、ヴィータも鉄槌を喰らったかのようにそれに目を向けた。
「あなたはそれでいいかもしれない! だけど、私たちは、それを見ているしかできない私たちはどうしてそれに納得しろっていうの!? 私はあなたを仲間だって思ってる。みんなはどういうか分からないけど、あなたが後ろにいてくれると私はとても自由に戦える。だけど、あなたは私たちを信頼してくれない、仲間だと思ってくれない。これ以上、私はどうすればいいって言うのよぉ」
涙混じりに叫ぶ彼女はおそらく、今までその努力によって多くの信頼と友情を得ることが出来たのだろう。そして、自分のその行動は間違っていなかったと。
エルンストもそれは確かに尊いことだと理解していた。
「俺を仲間だと思っていいただけることには感謝しています。しかし、もうこれ以上俺には関わらない方がいい。俺があなた方に運び込むものは破滅のみ。それを背負うのは消耗品である俺だけで十分だ」
エルンストはかたくなだった。全てを背負う覚悟はとっくに出来ている。だから、これ以上自分を揺さぶることは止めて欲しい。
「あたし等は! お前だけに背負わせたくないんだよ! あたしもお前のことは……まあ、認めたくねぇけど、頼りにしてるし仲間だって思ってる。だから、お前だけで背負うなんて止めろ」
「そうだよ、エルンスト君。自分が消耗品だなんて言うのなんて止めて。そうやっていたずらに消費される命なんてあっていいわけない!」
ヴィータとなのはは冷静さを欠いているようにエルンストは思えた。だからこそ響く。決意したはずのことが揺らぎそうになる。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪