りりなの midnight Circus
「それもこれも、すべての視線をエルンストに向けさせることでだ。正直な、俺はあんたを殴ってやりたいよ」
眉間に皺を寄せ、ベルディナをにらみつける朱鷺守はその手に自身のデバイスであるナイフを持って、今にも彼に飛びかかろうとする様子だった。
「結局、全員を巻き込むこととなったか」
エルンストは、自分自身の演技が全く無駄になってしまったことを嘆くと同時に、再び彼らと出会えたことをうれしく思った。
「エルンスト君のことは、聞かせてもらったよ。ごめんね、私、ずいぶん勝手なことばかり言って」
高町なのははとても悲しそうな表情を浮かべエルンストの目を見た。
「だが、これであたしらもようやくお前と同じところに立てたって訳だ。一つだけいっとくが、あたしの足をひっぱんじゃねぇぞ」
相変わらず胸の前で腕を組んでにらみをきかせるヴィータだった。
そしてその背後には、エリオンの後ろに姿を隠すアリシア、双子のリーファの姿もあった。
「シグナムと御剣はミッド・チルダで俺たちを逃がす手助けをしてくれた。逃亡中だがまだ生きている」
朱鷺守の言葉に、この場にいない二人にエルンストは無事を祈った。
「さてと、とにかく今後のことを考えるべきだ。艦長、できれば食堂かどこかの会議室を使わせてもらいたいのだが。許可はいただけるか?」
ベルディナはそういって美由紀を見ると、美由紀は「もちろん」と言って、食堂を使用することを進めた。
よく考えれば、エルンストとベルディナは朝から何も口にしていなかった。食事にそれほど魅力を感じていないエルンストも空腹には耐えきれない様子でベルディナを見ていた。
「よし、なら食堂だな。レイリア、案内しろ」
おそらく、先に乗艦していたレイリアならその位置がわかるだろうと当てをつけ、ベルディナはそう命じた。
「了解です、ベルディナ大導師」
レイリアは頷いて、彼らを先導するように艦の廊下に足を進めた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪