りりなの midnight Circus
しかし、あっさりと肯定してしまった彼のその態度をおもしろく思わないものは多く、レイリアとエルンスト以外の全員が、ベルディナに鋭い視線を浴びせかけている。
これがこんな状況でなければ、一瞬で彼は全員から殺されているだろう。
「どーでもいいけどさ。今からあたしらは何をすればいいわけ? あそこから助けられたってことはまだ利用価値があるってことでしょう」
意外にも冷静にそういったのは、いつもなら真っ先に暴れ出しそうなアリシアだった。いや、彼女もまたそういいながらこめかみをピクピクさせているところを見れば、必死になって自分の激情を押さえ込んでいるのだろう。
「俺もそれを聞きたい。もしも、この先さらなる戦いが待ち受けているのなら、むしろ使ってもらいたいところだ」
朱鷺守もそれには賛成の様子で、伊達眼鏡越しにベルディナを見た。
「いいだろう。説明する……が、一つだけ確認しておきたい。降りるなら今のうちだ。ここから先についてはあらゆる意味で命の保証はできん、そして、たとえ生き残ったとしても下手をすれば社会的な立場などすべてを失うことになる。それがいやならここで降りろ。これが最後のチャンスだ」
ベルディナはそういうとそこにいるもの達全員に目を配った。
それがベルディナが用意した最初で最後の慈悲なのだろうかとエルンストは思った。
しかし、エルンストはこうも思った、
「ここまで巻き込んでおいて、今更降りろと言うのはないな」
と。
つい口に出してしまった言葉だったが、その言葉になのは、ヴィータを始め全員が力強く頷いた。
「それでいいのだな?」
ベルディナの最終確認に、ヴィータが、
「話を進めてくれ。いい加減、待ったをかけられるのはうんざりだ」
と口にした。
ベルディナは、よかろうと頷いて、ようやく終わった食事を給仕に下げさせ、食後のデザートともに紅茶を注文した。
「今まで後手に回っていたすべてを取り戻す。そのためにはなんとしても連中をおびき寄せる必要がある。よって、君たちにはこれよりA32971世界、地球に潜伏してもらう」
A32971世界、地球。その言葉を聞いたレイリアの表情に明らかな陰が落ちた。
「私たち、というと、ベルディナ一佐は同行しないと言うことですか?」
なのはの問いにベルディナは、そうだ、と答えた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪