りりなの midnight Circus
第四話 不可解な戦術
午後の訓練の前半は、通常通りガジェットを相手とした戦闘訓練だった。
エルンストは新米達をざっと見渡して、彼らは必要最低限のレベル程度にはデバイスを扱えているなと感じていた。
(だが、訓練を受けてまだ数週間程度なのは分かるが、練度が低すぎる)
シミュレーションフィールドが生み出したビル群の模擬体が立ち並ぶ訓練場の高い場所で、訓練生に対して様々な指示を出すなのはとヴィータの隣でそれらを俯瞰していたエルンストは、僅かに溜息をつき【コールド・アイズ】を下ろした。
「エルンスト君の目から見てどうかな? あの子達は」
訓練を受けているのは、最近時空管理局に入隊した4人の魔導師のようだ。
なのはは彼らの個々が映し出されたモニターを見ながらエルンストに声をかけた。
「バランスは整っていると思います。最近デバイスを手にし始めたばかりにしてはですが。しかし、やはりまだまだ雑ですね。自分の目の前しか見えていない」
エルンストは、自分の前にも設えられたモニターを少しだけ操作し、模擬体ガジェットの進路を少し変更した。
彼にとっては少しだけパターンを変えただけのことだったが、モニターに浮かぶ彼らはまるで左右から強襲を受けたかのように狼狽し、その戦列を乱していた。
そうなればそれぞれの意思で各個撃破しか方法は無くなり、エルンストは彼らに襲いかかる4体のガジェットの戦術アルゴリズムをそれぞれに変更した。
「一人やられたぞ。センターのエルトだ」
ヴィータが、ヤレヤレと言いながらモニターを指さした。
エルンストの【コールド・アイズ】もそれを知らせるように、さっきまでそこにあったオレンジの光点が消えた。あとは、三つの青の光点が残されただけ。
おそらく、すぐに決着はつくだろう。
エルンストは、再びガジェットのアルゴリズムを変更すると、それを見守った。
「エルトは武装解除してそこに待機。動いちゃダメだよ」
なのははすかさずエルトに指示を送り、彼は悔しそうな表情で「はい」と言ってその場に待機した。
エルトは彼らのチームのリーダーを執り行っている人物だ。エルンストは、最初にガジェットの設定を変更した際、4体ともエルトを集中的に狙うように設定していた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪