りりなの midnight Circus
【ストライク・ビューワー】は了承の合図を光の点滅で伝え、追尾していたガジェットを一旦散開させた。
エルンストは彼らの進行速度から、その合流地点を割り出すとそれを包囲するような形でガジェットを配備させ直した。どうやら、散開したと同時に【ストライク・ビューワー】はガジェットに撹乱幕を射出させていたらしく、彼らはガジェット達の位置を再び見失っている様子だった。
エルンストの推測と寸分も違わない場所とタイミングで彼らは合流し、ノアを中心に守るようにエルトとカリスがその前後についた。
『あのガジェットは何か違う。こっちの動きを完全に予測し、こっちの虚を突く行動に出た』
『とにかく散開するのは危険だ。各個撃破されるのは拙い』
時間は既に20分を経過し、あと10分間で勝敗が決まる所まで来た。
エルンストは、細く微笑み、
(そう、戦場ではどこから敵が来るか分からない。どこから攻撃されるか分からない状況は恐ろしいだろう?)
そして、敵に発見されないということがいかに戦術的優位を生み出すか。エルンストはそれを彼らに教えたかった。
ガジェットの配置が完了した。
2体を地上に配置し、あとの2体は上空、ビルの屋上の物陰で彼らを見下ろす。屋上のがジェットが三人を捉えたことを確認すると、エルンストは地上のガジェットと一気に動かした。
前後より飛来するガジェットにカリスとエルトは個々に散開し、それぞれ攻撃を行った。中央のノアから注意が逸れた。
エルンストはそれを見計らい、屋上のガジェットにノアの撃墜命令を下した。
突然空から降り注ぐ魔法弾の雨に、ノアは完全に逃げ道を失い、実にあっけなく撃墜されることとなった。
そして、それはカリスとエルトの注意を引くのには絶好の機会となり、その後4体のガジェットから一斉発射される大規模飽和攻撃に彼らはなすすべもなく瓦解した。
「状況終了。訓練生、全員帰投せよ」
エルンストは、全員の光点が消滅したところを見計らい、訓練生にそう伝えガジェットを消去させた。
エルンストは、指示を仰ぐためなのは達に目を向けるが、彼女たちは少し驚いた様子で彼に目を向けていた。
その視線には困惑と驚愕に加え、僅かに疑念の文字が渦巻いているように思えた。
(少しやり過ぎたか)
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪