りりなの midnight Circus
なのはは訓練終了後、報告書を提出しにいったところで、ベルディナからエルンストに関する諸元が入力されたデータを渡された。彼は、「悪い、渡すの忘れてた」とへらへらしていたが、なのはは苦笑いを浮かべてそれを受け取った。
そして、先程部屋に来たヴィータと共にそれを眺めていたところだったのだ。
エルンスト・カーネル。時空管理局陸士教導隊所属の一等陸士。魔導師ランク、陸戦B+。4年前任官して以来、様々な部隊を転々としながら現在ここに至る。
何故、一つの部隊に所属しないのかその理由は、本人の対人関係に関する問題とだけ記されその細部に関しての記載は存在しなかった。
そして、今日ここに所属になる前の部隊は、陸士の一部隊。主に地上本部周辺の警備を担当する大規模部隊で、若い陸士なら大抵のものは一度はその部隊に所属するというものだった。
しかし、彼のあの戦術スキルはとても警備部隊で培われたものではないということは明らかだった。
あれではまるで、情報戦と諜報戦に長けた特別戦技捜査官のようではないかとヴィータは呟いた。
なのはもそれには賛成だった。だから、ベルディナから渡されたプロフィールには隠匿された部分が多く含まれているのではないかと邪推しているのだ。
「何にしても能力は申し分ないわけだから、私たちとしてはありがたいんだけどね」
正直なところ、時空管理局はその創設以来慢性的な人材不足が続いている状態だ。その状態を鑑みれば、例えその出身が不明な人物でも能力さえあれば、例えそれが幼い子供であっても戦力としてしまう。
なのはもそういった経緯を持つため、あまり大きな声でエルンストに対して疑念があるとは言えないのだ。それに、なのはが数年前まで所属していたかつての実験部隊の事を思うと、誰でも人に言えない事情がある事は重々理解していた。それは、例え気を許しあった友人や仲間であっても簡単には告げることの出来ないものである。
Fの遺産、戦闘機人。こんな事は考えたくはないのだが、エルンストもそれと何か関係しているのではないかと思ってしまう。
かつての実験部隊。今はその実験期間を終え、解体されてしまったかつての職場である機動六課を思い出し、なのははそこで共に戦った仲間達の事を思いやった。
「みんな、今どうしてるかな」
なのはのいうみんなをヴィータもよく理解していた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪