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りりなの midnight Circus

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 そこに記載されていたのは、エルンストのデバイス凍結の決定書であり、そこにはエルンストの署名ではなくベルディナの署名が記されていた。
「今からその凍結を溶こう。今後は何の問題もなく自分自身の戦術をとるといい」
 彼は何故、エルンストのデバイスが凍結処分を喰らっていたのかを説明することはなかった。
(つまり、それも知る必要のないことか)
 エルンストは半ば諦めの篭もった態度で肩を下ろした。ベルディナも彼の感情を理解はしていたがそれをどうこう言うことはなく、それだけ彼に告げると、彼に退出を許可した。
「では、これより出向準備を整えます。それと、出来れば射撃場の使用許可をいただきたいのですが」
 エルンストはこの一週間あまり、自分自身のデバイスを触れることが出来なかった。
 狙撃手であるいじょう、彼は任務や訓練のない日であっても最低一日に三度はライフルにさわってその具合を確かめる習慣をつけているのだが、この一週間はそれが出来なかった。
 彼はそれをストレスに感じ、それが次第に不安につながっていくことを自覚していた。あと数日もこの状態が続けば、下手をすればデバイスをかち割ってでもライフルにさわりたいと思うようになっただろう。そんなことは不可能ではあるが。
「そうだな、使用を許可する。ただし、消灯までだ。管理課に通達しておく」
 ベルディナは、それを理解していたのか実にあっさりとそれを許可した。
 エルンストは礼を言うと、再々度敬礼をし、直ちに部屋から退出した。
 彼の足音が廊下の向こうに消えていくと同時に、ベルディナは
「ふう……」
 と一息つき、椅子に深く背をもたれかけた。
「これで第一段階は終了か。第二段階はどうするか。俺の布石が功を奏すれいいんだがな」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪