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りりなの midnight Circus

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「分かった。ごめんね、こんな話をして」
「こちらこそ申し訳ありませんでした」
 彼の淡泊な口調には申し訳なさを感じることは出来なかったが、それはまだ自分が彼の本来を知らないからなのかも知れないとなのはは思い直すこととした。
「いいよ。信頼されていないのは私たちの問題だし、いつか君の信頼を勝ち取ってみせるって思えるから。正直に話してくれてありがとう、エルンスト君」
 信頼されていないのなら信頼を勝ち取ればいい、そして、エルンストに対しては口で何を語ろうとも意味はないということもそれまでの交流で分かっていた。ならば、行動で示せばいい。自分たちが信じて頼りに出来ると彼が思えるようになるまで精一杯行動で示せばそれで良い。
 なのはは隣で平和そうに眠りこけるヴィータの頭を撫でながら柔らかな笑みを浮かべた。
 それまで沈黙を保っていた運転手がそろそろ目的地へ到着するという知らせになのはは窓の内側からそれを見た。
 特務機動中隊本部ビル。それは、かつての実験部隊機動六課と建物を同じにしただセクション名と所属を僅かに変更しただけのものだった。
 なのははわき上がってくる感情を抑えられず、不覚にも少し涙が流れそうになった。
(あそこで私はいろいろなものをなくし、そして大切な物を得ることができた。エルンスト君もそういうものが見つかると良いな)
 失い事の痛み、得ることの喜び。おそらく彼は痛みばかりを得てここにいるのだろう。彼が何か大切な物を得ることが出来ればその時は本当の意味でお互いに理解し合えるのかも知れない。
 なのははこれから積み上げられていく日々を思い、その胸に希望を抱いた。
(大丈夫、何とかなる。今までもそうだったから、きっとこれからもそうなっていくよ)
 彼らの乗る乗用車はそのまま速度を落とし、機動中隊ビルの裏手に設えられた職員用の駐車場へと入っていった。
 

作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪