りりなの midnight Circus
カーテンを押し広げ、僅かに高くなったその場所から下を眺めると、なのはが小さな子供と一人の男と一緒にいるところが見えた。
「高町一尉の家族か? それにしては、似ていないな」
彼女をママと呼ぶその少女は、小麦色の髪を両サイドで僅かにくくり、その瞳は両の目で色が違う。
その瞳の色、髪の色からしてなのはのものともその二人を見て微笑む男のものとも異なる。
何か事情があるのだろうとエルンストは黙ってそれを見ていた。
「それじゃ、ヴィヴィオをよろしくねユーノ君」
なのははそういうと、ヴィヴィオと呼ばれた少女とユーノという男と別れ、二人はその先に止められた車に乗り込んだ。
その車が見えなくなるまで見守るなのはの背中には、どこか哀愁というか、寂しさのようなものが漂っているようにエルンストには見えた。
エルンストは、そのまま窓から離れ部屋を出た。
宿舎を抜け、本舎に抜ける渡り廊下を歩いていると、側の角からなのはが姿を見せた。
「あ、エルンスト君。おはよう、早いね」
「高町一尉も。今日は午前の訓練もないでしょうに」
エルンストはその理由をおよそ分かっていながらわざとそういった。
今日は昨日の事があり、午前の訓練、朝食前に行われる小さな訓練、が休みになったのだ。
昨日の夜。その日の訓練の最後に棋理が告げた19:00の任務に彼が、なのはとヴィータと共に向かった食堂で彼らの歓迎のパーティーが催された。
久しい二人、なのはとヴィータとの再開の喜び、エルンストの歓迎のため豪勢ではなくとも暖かなパーティーだった。
「ちょっとね。人が訪ねてきたから」
「なるほど」
最低限嘘はつかない彼女の答えに、エルンストは彼女が嘘が苦手だと言うことを思い出した。
「高町一尉の娘さですか? それと彼は夫の方でしょうか」
エルンストの問いになのはは驚愕して彼を見た。
「申し訳ありません、上から見ていました」
なのはは「そう……」と言って、先程エルンストの口にした言葉に慌てた。
「え、えっとね、ヴィヴィオが娘だってのは間違いないんだけど。血はつながってないけど、私のことママって呼んでくれるし、だけどユーノ君は、その、お、夫って言うのとはちがうくて」
エルンストは「そうですか」といって、
「結婚はまだだったのですね。交際中ですか?」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪