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りりなの midnight Circus

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 エルンストの考えでは、未婚といえ自分の娘を預ける相手がただの友人では済むはずがないとなっていた。
「こ、交際中って。そりゃあ、一緒にお買い物とか食事とは行くけど、そこまでは……」
 顔を一気に真っ赤にするなのははあくまで否定的な立場をとるが、エルンストは少しだけ表情をかげらせて、呟いた。
「何事も次得られる保証はありません。気がつけば手から滑り落ち、永遠に戻ってくることはなくなる。後悔しても遅く、取り戻すことはできない」
「エルンスト君?」
「あなたは俺のようになるべきではない。ただそれだけのことです」
「エルンスト君は、あるの? 取り戻したくても取り戻せないものが」
「そうですね、一番近いものを言えば。昨日の夕食ですか。あれは良いものでした」
「え?」
「では、先に行きます」
 エルンストはそう言い残すと昨日残していた作業の続きを行うべく、デバイス保管庫横の作業室へと向かっていった。
「もう、エルンスト君ほ油断ならないなあ」
 多分、まだ彼は自分たちを信頼はしていないのだろう。それでも彼はその胸の内のほんの僅かを開いてくれたような気がする。なのははまだ熱い頬を撫でながら、喜びと共に足が軽くなるように思えた。

***

 その日はとても平穏な一日になると思っていた。寝不足の疲れが目立つ分隊員を眺めて、朱鷺守棋理は午後の訓練を早めに切り上げ、そのまま自由待機として自身も休憩に入っていた。
「お疲れ様です、朱鷺守一尉」
 寮の一角に儲けられたカフェで珈琲を堪能していた棋理の元に、同じく珈琲を手にしたレイリアが挨拶を交えて席を共にした。
「よう、レイリア。お前もここか」
 棋理は呼んでいた新聞から目を上げ、レイリアを歓迎した。
「ええ。途中でヴィータ二尉と会いまして、お茶でもどうかと誘ってみたらOKが出ましてね」
 レイリアの視線の指す方向には、まだ何を飲むか考えあぐねているヴィータの姿があった。その容貌からすればまだまだ子供である彼女は、棋理が舌を巻くほどの戦闘力と実績を持つ。
 闇の書事件、ヴォルケンリッターという事情を知る彼には彼女が多くの時をそうして戦いに身を投じることで生きてきたと言うことを知っていた。
 故に、棋理は立場上階級の低い彼女に対しても一定の敬意を表しているのだ。
「なんだ、朱鷺守も一緒かよ」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪