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りりなの midnight Circus

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「だったらいくぜ。いいか、絶対に魔術は使うな。デバイスのセットアップも禁止する」
 朱鷺守はそれを総括するように伝え、彼らを率いるように颯爽とビルの群れの中へと足を進めた。
 その後を、シグナム、なのは、ヴィータ、双子のリーファが続きしんがりをレイリアが勤めた。
「だけど、エルンストのやつ大丈夫かしら。無茶してないといいけど」
 アリシアはエリオンの手をまだ握りながら、遠いビル郡の空を見上げそう呟いた。
「心配かい?」
 レイリアは後ろからアリシアに声をかけた。
「ば、馬鹿! 違うわよ。何であたしがあいつなんかの心配をしなきゃなんないのよ!」
 アリシアはエリオンの手を解いて、両腕を振り回すように抗議した。
「おっと、それは失礼。後であいつにもそういっておくよ」
 面白い遊び道具を見つけたといわんばかりの笑みを浮かべるレイリアに、アリシアはさらに顔を真っ赤にした。
「だめに決まってんでしょ。何も言っちゃだめ」
 すっかり狼狽してしまったアリシアを見て、普段は割りと冷静に激昂する姉がこんな風に自分を見失うことを珍しく感じたエリオンは、
「アリス、エルンストのことが気になるの?」
 と静かに問いかけた。
 その問いかけにアリシアはピタッと動きを止め、もじもじと背後で手をもむと、
「そ、そうよ。悪い?」
 と可愛らしく口を尖らせた。
「ううん。悪くないよ。とてもいいことだと思う。だけど……、エルンストはやめておいたほうがいい」
「なんで!?」
「多分、あいつは。人間というものをそういう目では見ないと思うから」
「…………」
「ごめん。これは僕の言うことじゃなかったね」
 アリシアはそのまま押し黙り、エリオンの前を足早に歩いた。
 レイリアはそんなアリシアの様子を見て、エリオンの肩に手を置いた。
「今のはよくないな。真実であっても口にしないほうがいいこともある。後で誤っておくんだぞ」
「はい」
 エリオンはそう短く答え、アリシアの背中をさびしそうに見ながら彼女の後を追った。
 少し距離の離れたレイリアはその様子を見て、少しだけ肩を落とした。
「やれやれ。人間というのは面倒なものだね。いっそのこと、すべてがエルンストや僕みたいだったら感情的な衝突や憤りなんて起こらないのに。だけど、それじゃああまりにも面白みはないか」
 そして、彼も空を見上げ、一言だけ呟いた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪