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りりなの midnight Circus

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 そして、これはエルンストが独自に考えていることなのだが、機動中隊には情報に特化した人員が少なすぎる。確かに戦闘能力やデバイス、魔術運用に長けるものは数多く、その全員が通常の陸士部隊に比べればその練度がずば抜けている事も認められる。
 しかし、それだけではダメなのだ。戦場を支配するものは情報であり、情報を支配するものは戦場を支配する。故に、幾ら強力な戦闘力を持つ部隊であってもその情報を適切に統括できる人間がいなければただ勢いのあるだけの部隊に成り下がってしまう危険をはらむ。
 エルンストは、自らその情報戦の全てを受け持つことで部隊戦力の向上に貢献しようとしたのだが、それが返って同じチームに所属する二人に疑惑を抱かせているという結果につながってしまっている。
 アグリゲットの通信が終了しても、作戦の成功を祝うことなくヘリの中は重苦しい沈黙が支配する。なのはとヴィータの前方のシートに腰を下ろすエルンストは自身の背中に二人の視線が集中している事を自覚していた。
 しかし、どうすることも出来ない。ベルディナ・アーク・ブルーネスが解析に一宇宙時間もかかるような高強度の暗号通信を使用したからには、あの作戦はトップシークレットに属する事なのだろう。残念ながら、エルンストにはそれを明かすだけの権限はなかった。
「犯人を仕留めたのって、いったい誰なんだろうね」
 なのはがポツンと漏らした言葉にエルンストは何の反応も返さなかった。
「さあな、たぶん腕のいい狙撃手だったんだろうよ。それこそ、3000m以上ねらえる奴がな」
 それに答えるヴィータはなのはに目を向けず、鋭い視線をエルンストの背中に浴びせかけた。
「ねえ、エルンスト君。君は知らないかな? 監視していた時に何か見えなかった?」
 高町一尉にしては意地の悪い質問をする。エルンストはそう考え、問いかけられたからには何か答えなければならなかった。
「俺にはなにも。いきなり犯人がはじけ飛んだのが見えただけで、それ以外には特に目に付くものはありませんでした」
 嘘をつくことにエルンストは何の抵抗も良心の呵責も感じなかった。おそらくなのはもヴィータも、自分がこう答えるだろうと予測は付いていただろうし、自分はただその期待にこたえるだけだと割り切るばかりだ。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪