picaresque pirstes
プロローグー偽装
スパニッシュコーストと呼ばれる沿岸が新大陸のそばにある。
彼はこのあたりを根城にする海賊であった。ただし、それは彼本来の姿ではない。北海に浮かぶ小さな島、イギリスが彼の正体だ。だが、彼はまだまだ国力をつけている途上であり、富を稼ぐためにここでこうして仕事をしているのだ。
「船長、獲物が来ました! あのつくり、間違いなくスペインのガレオン船ですぜ!」
船室に飛び込んできた男を一瞥して、イギリスはオーク材でできた机の上から足を下ろし、唇をゆがめた。
「飛んで火にいる夏の虫、だな。黄金で肥えた豚野郎を罠に追い込んでやろう。おい、スペ公の旗を用意しろ。やつらの大砲は厄介だからな。偽装して近づける限り近づくぞ」
立ち上がった青年は上着を脱ぎ、シルクのスカーフを解くと、部下に一言、付け加えた。
「そうだ。旗だけじゃ弱いからな。今日は例の偽装も試すと全員に伝えろ」
作品名:picaresque pirstes 作家名:みずーり