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picaresque pirstes

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1章 親分の騎士道


「はぁ…。海は青い、空も青い、順風満帆、歌でも歌ってシェスタでもしたい天気やなぁ」
「安全な海域に出たら、いくらでもやってください」
 部下の言葉に、スペインは頭を掻いた。確かにこのあたりの海域は海賊どもの巣窟である。何度痛い目を見たか分からない。だが、それを糧に自分は成長してきた。最近はずいぶんとあの薄汚れたハイエナどもを追い払うことに成功している。
「親分! 船が見えます! 旗は…スペインです」
「油断したらあかんで。海賊どもは、俺んちの旗を上げるくらいのことは平気でしよるからな」
 スペインは懐から望遠鏡を取り出し、船に焦点を合わせる。甲板の上では女達が助けを求めるようにこちらの船に扇子やハンカチを振っているのが見える。
「……助けて〜って意味ちゃうかなぁ…こんなところで女ばっかじゃ、食べたって〜っていってるようなもんやないか。これは、守ったらなあかんやろ」
「…でもこんなところで女性って、怪しくないですか?」
「う〜ん…そやけどなぁ。ホントに助けを求めてる女の子やったら、見殺しやで?」
 スペインが逡巡している間に、その船はよろめきながら離れていきそうになった。
「このままじゃ、あの船座礁してしまうわ。見てみぃ、あの操船。どうみても素人さんや。追っかけて助けるで!」
「わ、分かりました!」
 無防備に近づいた瞬間、小型のスループ船がすばらしい操船でこちらに横腹を見せた。そして、何が起きたか分からないうちに爆音が響き、砲煙が上がる。
致命傷は避けたものの、マストが音を立てて折れ、何人もの乗組員がその下敷きになる。
「な…なんや?!」
 スペインは相手の船を呆然と見つめた。脂汗が滴るのを無意識にぬぐって、起こりえないことが起こった事実を確認するべく、望遠鏡の照準を再び相手の船に合わせた。
 モスグリーンのドレスを着た女が見せ付けるように顔を隠した扇子をずらし、まるでこちらが見ていることを知っているかのように凶悪な笑みを浮かべる。
 見覚えのある眉毛に、スペインは自分がだまされたのを知り、奥歯を強く噛み締めた。
作品名:picaresque pirstes 作家名:みずーり