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オールオーバーザマイライフ

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私には母がいる。もちろん父もいる。けれど兄弟は一人もいない、ただ両親がいるだけだ。叔母や祖父もおらず、親戚は両親の兄弟だけ。
母の弟は忙しいらしくよっぽどのことがないとこの家へは来ない。なんとなくだけれど、父をあまりよく思っていないみたいだ。でも、彼は私には優しいからそんなことはどうだっていい。
逆に父の妹たちはよく遊びに来る。私を見て、目元以外は静雄さんに似てるねと口々に言われて、私はいつも少しだけ恥ずかしくなる。そうして二人に玩具にされながら縮こまっているといつも母が助けてくれるのだ。母はとても優しい。だから二人に、性格もどっちかといえば静雄さん似だよね、といわれると、嬉しいのと恥ずかしいのでもっと縮こまることになる。

私が住んでいる家は新宿にある高級マンションの一室だ。必要以上に大きい窓がリビングの壁一面を陣取って、目下にうごめく新宿の街並みを朝も昼も夜も見ることができるようになっている。ここはもともと父の仕事場だったらしい。父は片手じゃ足りないくらいの仕事場を持っているが、何でも一番重いれが深いところだそうだ。私にはよくわからないが、その話になると母が異様に反応するのでそれがきっと面白いんだろう。ただ、そのたびに(照れ隠しだとしても)椅子を振り回すのは危ないしやめたほうがいいと私は毎回思うのだけれど、父は嬉しそうだし(きっと父はマゾだ)怒っている母は怖いので私はさっさと退散することにしている。

さて、もう気づいている人もいるだろうが、私の母親は女ではない。一般的に呼ばれる母親と呼ばれるものとも違う。母は男であり、戸籍上父と母は夫婦ではない。一応私は母の養子という扱いにはなっているから性は平和島だが、事実私は母とも父とも血が全くつながっていないのかもしれない。残念なことは私自身が私自身の出生について全く何も知らないということだ。
父の話いわく、私は生後間もない姿のまま小さなかわいらしい籠に入れられて、マンションのちょうどその日は雪が降っていたらしいのだけれど、父の仕事場兼家の扉の前に置かれていたらしい。
父としては、何だこれはということだったのだそうが、五度を下回る気温のさなかに生まれたての赤ん坊を置き去りにしないくらいの常識はあったと見えてすぐに部屋に入れたらしい。時刻でいうなら深夜を少しばかり過ぎた時間帯。警察に届けようか、どうしようかと考えていたところ、ちょうど一緒だったらしい(この話をした時、父は異様に含みを見せて母に殴られていた)母がどうかしたのかと起きてきたのだそうだ。

「シズちゃん、外に赤ん坊がいたんだけど……」
「はぁ…?」

母が父の手元を覗き込んだ時、私はとても安らかに穏やかにすやすやと眠っていたのだそうだ。それはそれは幸福そうに。

「……言い残すことはあるか、ノミ蟲。」
「ちょっと待ってシズちゃん、せめて身に覚えがあるかどうかぐらい聞いてよ」
「お前のことだ、腐るほどにあるに決まってんだろ。」
「否定はしないよ、しないけど、これは俺のせいじゃないよ。言いがかりはやめてほしいな。」
「じゃあ、何でお前の家の前にガキがいるんだ、」
「さぁ…誰かが間違えたとか。」
「本気で言ってるんならお前の脳みそはもう腐ってると思っていいんだな。ということで、潰す!!」

なんだかそういう話になったらしくて、母は父のマンションで盛大に暴れたのだそうだ。
その後、一応父は情報屋などをやっていたりするから、そのつてでその日前後三日間での新生児の誘拐、行方不明について病院に始まりいろいろと調べ上げたらしいが、全くの0というある意味記録的な数字を叩き出してしまった。警察にも届けはなく、本当に誰の子供かもわからないらしい私を何を思ったか父は知り合いの闇医者の所へ連れて行った。

「この子調べてくんない?」
「は?」

父と腐れ縁という闇医者の名前は新羅。ぱっと見るだけでは軟い普通の青年だが、行ったん恋人の話をし始めると、彼の恋人にしかもう止めることはできなくなる。私も何度か会ったことがあるが、確かに変人ではあった。あったけれど、案外気さくで父が言うほど悪い人間にも見えなかったので私は彼のことが嫌いではない。というより、私は父のほうがよっぽど変態だと思うので、彼は全然範疇内だ。オールグリーンである。
話を戻そう。そうして、父は私をその闇医者のもとに連れて行って、私のことを調べろとのたまった。

「別に精密検査をしろって言ってんじゃない。どういう経緯で家に来たか本当にさっぱりわからないんだけど…」

父はそのとき子供なんていなかったから、多分すごく困っていたのではないかと思う。
なんせ深夜だし、私は寝ていたらしいが警察に届けて面倒なことにはなりたくなかっただろうし。とくに母のほうは、ずっとそわそわと落ち着かなかったらしくて、新羅の恋人セルティに何度もなだめられていたそうだ。
とりあえず、私はその新羅に預けられてしばらくを過ごすことになった。父はそのあと何度も私のことを調べたりしたらしいが、本当に気持ち悪いくらい何も出なかったという。

___それから1カ月ほど後の話だ。新羅から一本の電話が父のもとにかかってきたのは。

「あのさ、あの子供の話なんだけど。」
「俺のほうなら何も出てないよ。何かヤバい感じがしてたんだけど、これだけ何も出ないと何とも言えないな。あの子、いたって普通の子供だったんだよね。」
「まあね。それは置いといてさ、今日面白いことがわかったんだけど。」
「面白いこと?」
「うん。つかぬ事を聞くけど、彼女、静雄君の子供って線ないかな。」
「あはは。あり得ないよ。」
「だよねー。まあ、いいや。時間あいたら来て。今日1日中ここにいるから。」

新羅が父に話した内容を本当に簡単にまとめてしまうと、私はどうやら母静雄の血を少なからず引いているということだった。母には全く身に覚えがなかったことらしく、血縁というならばと弟に尋ねてみても全く分からないとのこと。そしてもう一つ。私の目はまるで父のように赤い。それで出した新羅の結論がこれだ。

「すっごく気持ち悪いけどさ、二人の子供だったりしない?」
「「そんなばかな」」

多分私がその時点でその会話を理解できていたりして、会話することもできていたとしたら、同じことを言っていたと思う。そんなバカみたいな話なんてそうそうあってたまるかということだ。

結局私のことは新羅たちに手伝ってもらいながら母が育てることにまとまったらしく(すったもんだの結果らしい。その間に父は軽く3回ほど骨を折られたと新羅から聞いた)そうして私は無事に中学まで上がることができたのだ。