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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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甘い恋などどこにもなくて

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ここ数日自分の周りはえらく騒がしいと新八はため息をついた。
神楽が定春の散歩に行くのに一緒についてこいと言って聞かない。
一緒についていけばどういう訳か必ずあの天敵に会う。
会うのが分かっているから違う道を行こうと言っても
「ここは定春の散歩コースネ、あいつのせいで変えるなんて死んでも嫌アル」と聞かない。
別にそれはそれでいいのだがどうして自分をわざわざ一緒に連れて行くのかが皆目分からない。
「ねえ、神楽ちゃん、僕は一緒じゃなくてもいいんじゃないの?」
そう言いたくなる理由はただ一つ。
喧嘩に巻き込まれて周りの人間に頭を下げるのは自分の役目だったからだ。
神楽の不祥事はしょうがないとして・・・。

「よお。チャイナ、まだここの道使ってるのかぃ」
後ろから声が聞こえると新八はふうーっとため息をついた。
その瞬間ばりばりばりっと何かが壊れる音がした。
(どうしてこの人の尻拭いまでしなきゃならないんでしょうか天国のお父さん)
振り向くと無惨に壊れたベンチの横に定春がふわっとあくびをして座っていた。
その横にちょこんと座り新八もその成り行きをただ見守っていた。
常人には見えない手足の動きをかろうじて追っていると、何となく最近はお互いの手の内が見えてくる。
(型みたい)
しっかりと見てみるとその動きはなかなか美しかった。
(さあそろそろ手の内が見えてくるな)
しゅっしゅっという音と共に手足を繰り出す二人の動きをじっと見つめ、新八がすっと動いた。
「はいそこまでね。今日のお散歩はおしまい」
一瞬の隙を見て神楽の腰の辺りに手を回して動きを止めた。
「何するネ!」
神楽はしかし腰に回された手をつかんでそのまま動きを止める。
「もういいでしょ。今日の定春と神楽ちゃんの散歩はおしまい。はい、沖田さん、ベンチよろしくね」
ぶ然とした表情の沖田を一瞥すると新八ははあっとため息をついた。
「あのさ、二人が仲がいいのは分かったから、今度からは二人っきりで会って欲しいな。当て馬にされる僕の身にもなって欲しいね」
少し顔を赤らめながら新八が言うと二人の表情が固まった。
「なんでい!これは新八さんを賭けた・・・」
そう言いかけて後ろから来た土方に思いっきり殴られ、連れて行かれる沖田を神楽はにやっと笑って見送った。
「神楽ちゃんも、素直になったら?」
まだ顔を赤らめている新八に神楽が一息ついて酢昆布を取り出した。
「まだまだ甘いアル、新八は」
そう言って新八の腕に巻き付いた。
「素直に言ったらダメネ!駆け引きはこれからアル!」
そう言って笑いながら今度は背中に飛びついた。
新八が真っ赤な顔をして神楽を背負うと、その背中で神楽がニヤニヤと笑っていた。
「はあ、春かあ、いいなあ」
しかし二人の意図は新八には全く分かっていなかった。

「・・・という訳で銀さん僕はどうしたらいいのでしょうか」
他に相談する相手もいないとはいえ、新八は明らかに自分の人選ミスを恨めしく思っていた。
「ふーん、ほっとけば?」
「そうですよね、って僕はそういう事を相談したいのではなくて・・・」
先程からこのやる気の無い上司に新八は何度か同じ事を繰り返し言っていた。
「だから、二人がつ、つき、つき合うというのはいいとして、僕を当て馬にするのはやめて欲しいんですよ」
はあっと最近多くなった今日何度目かのため息を付きながら手にしたお茶をくるくると回している。
「やだって言えばいいじゃん」
銀時の方ももう何度か同じ台詞をはいている。手にした雑誌は見終わったのかぺらぺらとめくっては同じ所を読んでいるようだ。
「やだって言って聞く人達ならいいんですけどね」
溜息が自然と漏れると銀時は思わず新八の前に手を出した。
「あーあもったいねえ、幸せが逃げる逃げる〜」
そう言って自分の手を口に持ってきてぱくっと何かを食べたような仕草をした。
「うっ、人の幸せ食べましたね」
新八が口をへの字にして鼻から思いっきり息を吸った。
「とにかくよぉ、何とかは犬も喰わねえっていうだろ」
「二人はまだ何とか以前なんですけどね」
「まあどっちでもいいけどよ、何だあれだ、ほっとけ」
先程大きく吸った息と同じ位大きなため息をして肩を落とすと銀時が今度は両手を出してそのため息を大きくすくった。
両手で鼻の穴が見える位頭を反らせて口に放り込む仕草をした。
「あああっっ!僕の幸せがああ〜」
そう叫んでその場に突っ伏した。
「いいなあ、春」
その夜道場に帰った後銀時は神楽に向かってそれとなく新八の言った事を伝えた。
「だから、その何だ。新八が困っているという事だけは分かってやれ」
きょとんとした神楽を前に銀時がやる気のなさそうな声で話していた。
「銀さんちゃんと言ったからな。あとはお前がなんとかしろよ」
頭をぼりぼりとかいてテレビを見る銀時に神楽がにいっと笑った。
「新八は鈍いネ。まあダメガネだからな、あいつ」
そう言って自分の寝床に向かう神楽を銀時が不思議そうな顔で見送っていた。

「銀さん、僕の話はきちんと神楽ちゃんに伝わっているのでしょうか」
定春との散歩から帰ってきた二人と一匹を銀時は不思議そうな顔で見つめていた。
新八は何かあったのか真っ赤な顔をしている。一方の神楽は新八の腕をつかんで離そうとしない。そして・・・。
「どうも、ご挨拶にきやした」
定春の後ろからにょきっと色素の薄い頭が見え、黒い隊服を着た男が現れた。
「えっと・・・何しにきたの」
銀時が発した言葉はむなしく宙に浮いていると新八は思った。
「二人にちゃんと話したんです。これからは二人っきりであったらどうですかって。そしたら、決着をつけるなら銀さんが立会人になって、とか訳の分からない事を言い出して・・・」
銀時が眠そうな目をしょぼしょぼさせてそこに立っている3人と1匹を見比べた。
「10代の事は10代同士でやって欲しいんですけど、っていうか中学生日記ですか、あんた達」
「僕は関係ありませんよ。二人の問題です」
新八が赤くなって下を向くと二人が声を揃えた。
「だから〜」
揃った事に腹を立てたのかそのまま黙る。
「えーっと銀さん仕事に行っていいかなあ」
「仕事なんかねえ癖に!逃げんのか!!」
真っ赤になった新八が声を荒げる。
沖田と神楽はじっとにらみ合ったままだった。
「今日こそはっきりさせようじゃねえかよぉチャイナ」
「望む所ネ」
二人の険悪な雰囲気に銀時と新八が違和感を覚える。
「えっと、なんだ、今日日カップルの愛の言葉は強烈だねえ新八くん」
「えっと、今日日も何も、僕は彼女いない暦16年ですから」
沖田と神楽は一触即発の様相を呈している。
「あのね、ここ銀さんの家だから、暴れるなら外でやって欲し・・・」
「ぎゃああああーーー」
突然響いた新八の悲鳴の元は二人が新八めがけて突進してきた事だった。
沖田が新八の首を、神楽が新八の足元にしっかりとしがみついていた。
沖田に至っては今にも新八に噛み付こうとしている。
慌てる新八が必死になって沖田の顔を押さえていたが、下から神楽が昇ってきてこちらも首に巻き付いてくるものだから、新八はそのまま倒れてしまった。
倒れた新八に二人掛かりで襲いかかる光景に銀時が腰を抜かした。