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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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甘い恋などどこにもなくて

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「近藤さん、いくら俺でもそりゃあ無理ですぜい。入れたところで出てくるのは、うん・・」
はっとした近藤が起き上がると沖田の口に手を当てて最後の言葉を遮った。
「総悟君?!それ以上言っちゃダメだよ?!そっちじゃなくて入れるのは」
「そっちってどっちでぃ」
手を外しシレッと言う沖田に近藤は目の前が真っ暗になった。
「お姉様つかぬ事をお聞きしますが」
「ゴリラの兄弟を持った覚えはなくてよ」
「いえ。その、新八君のお姉様・・・」
「なにかしら?くそごりら」
「くそもゴリラも余計です・・・いえ、こっちの話です。その、新八君は実は女だったと・・・か」
バキッッゴキッ
「次期恒道館当主志村新八、まごうことなき男です!そりゃあ少し頼りないかもしれませんが、心根の優しい立派な男児です」
「そうでさぁ、近藤さん。俺ちゃんと見ましたぜぃ、股の間にある立派な・・・」
「いつ見たんじゃああああああ」
怒号と共に繰り広げられる攻撃に、沖田はすべてよけていた。近藤を盾として。
「ぶほ、ちょ、総悟・・ぐほっ」
「お願げえします、新八君を嫁に・・」
軽々と近藤を持ち上げながら、お妙の攻撃を紙一重で(近藤が)よけつつなおも懇願する。
「新ちゃんは恒道館の跡取りです。嫁などに行かせるわけにはいきません、つか私だってまだ嫁に行ってないのに」
その言葉に沖田がはっとした表情で動きが止まった。
「わかりやした、ここは俺も男です」
意識が遠のく近藤を力任せに庭に放り投げ、畳に手をつき頭を下げた。
「俺ぁ・・・嫁に、嫁に来ます。志村総悟、そう呼んで下せぇ」
「沖田さん・・・」
(総・・・悟・・・君?)
お妙の手が止まる。
(総悟それほどまでに)
薄れる意識の中で聞いた部下の決意に近藤は涙を一粒流して・・・。
「跡継ぎはどうするの」
そうだ、その問題が。
「頑張って毎日やりまくって新八君にカワイイ男の子を産んでもらいやす。だからお姉様。新八君と結婚させて下せぇ」
「え」
ぶちり
遠くの方でそう聞こえた様な気がしたが、その後は耳元で聞こえる轟音にかき消されてしまった。
「ごりらぁぁぁーーーーーー」
雄叫びが志村邸にこだました。

お花畑の向こうの方で白無垢を着た沖田と完全に縛られた状態で隣に座らされている新八の姿が近藤の目の奥に焼き付いた。

多分

ここは天国だろう・・・

地獄に花嫁はいないからなーあははは

きれいだぞ、総・・・・悟・・・・