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とある時空の並行旅人~パラレルトラベラー~

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T3 行方不明


息を乱し、ライトブランの髪の毛を乱しながら彼女は、一心不乱に路地を駆け抜ける。時々後ろを振り返りながら路地を細かく曲がり大きな通りを目指す。このあたりは住み慣れている場所なのに、商店街の通りや人通りの多い道になぜか出られない。気づけばどんどん一通りもなく薄暗く細い路地へ入ってしまった。
「はぁ・・はぁ・・」
必死になりながら奥へ進むと奥にはビルに囲まれた・・
「行き止まり・・・」
慌てて戻ろうとすると、路地から一つの影が出てくる。薄暗く顔ははっきり見えないが体のラインから女性というのは伺えた。
「な、なにか御用ですか」
震えながらも必死に搾り出した声で問いかける。
「・・・・・」
地面を踏みしめ近づく足音。必死に問いただした彼女に対し、望むべく答えもなく非常な足音だけを返す。彼女は近づく人影に対し少しずつ下がる。後ろのビルまではまだ少し距離があるはずだが、不意に何かに背中がぶつかる。

ガッ・・・・・

彼女の意識はそこで途切れた。
「こいつの力は?」
「この端末を信じるならレベル3って所ですね」
「まあまあか・・」
女性と思われる人影は携帯を取り出し、キーを押しコールのボタンを押した。数回のコールが鳴り電話の向こうから男の声が聞こえた。
「お疲れ様です」
「ああ、今レベル3を捕まえた」
「では1人分の装置を準備しておきます。」
「時間まで残り少ない。目標をそろそろ確保に入る」
「わかりました。・・・ところで一つ問題が」
「あ?」
女性の声が少しだけ強張る。それに対し電話の男は少しだけ声のトーンが小さくなった。
「門脇(かどわき)がアンチスキルに拘束されました」
「・・・そうか」
チッと舌打ちをした。
「ほっとけ。やつも覚悟の上だ。今は確保優先だ」
そういって通話を切った。
「姉さん、僕もそうやって首切られたら嫌ですわー」
茶化すようにもう一人がつぶやく。
「ふん、それより解除しろ。移動する」
「わかりました」
そういうと同時に徐々に車の音、通行人の雑音、会話が聞こえてくる。日差しはオレンジで二人の足元を照らす。そのまま日差しに素顔をさらすことなく、薄暗いほうへ消えていった。「白井さん」
校内の廊下を歩いているときに呼び止められ、黒子は振り返る。そこへ近づいてい来る明るめの黒のロングヘアの女の子。
「あら、泡浮(あわつき)さん。どうかしまして?」
顔を強張らせた彼女はいつもより口調を早めていた。
「じ、じつは・・・」

「湾内(わんない)さんがいなくなった?」
お昼休み、黒子と一緒に昼食をとっていた美琴はサンドイッチを銜えたまま、今日一緒に昼食をとっている泡浮のほうに目をやった。
「そうなんです。昨日から寮内でも姿を見なかったです。夜も朝も部屋へいったのですが鍵が閉まっていて」
湾内絹保(わんない きぬほ)と泡浮万彬(あわつき まあや)は一緒の学舎の園内の学生寮に住んでいる。
「寮長には話した?」
2個目のサンドイッチに手を出しながら美琴は聞いた。もちろん、というかわりに泡浮は頷いた。
「ええ、警備員(アンチスキル)にも捜索依頼したようです」
「風紀委員(ジャッジメント)のほうにも、捜索の依頼はきておりましたの。ですが・・・」
黒子は少し視線を落とした。
「ここ数週間の間に、湾内さん以外にも行方不明になった能力者の方がおりますの」
「能力者の・・・行方不明・・・」
「湾内さん大丈夫でしょうか」
黒子ははっとして、いつもの表情で泡浮をみた。
「大丈夫ですわ。警備員(アンチスキル)の方々と協力して、必ず見つけて見せますわ」
「そうよ。きっと見つかるから安心して」
「はい」
目に涙をためた泡浮は、二人に言われ少し安心したのか先ほどよりも安堵の表情を浮かべた。対象に黒子は表には出さないが、この能力者限定の行方不明の事件に何か嫌な予感を感じていた。美琴はそれを知ってか知らずか、
「もーらい」
といって、黒子が手に取っていた口をつけていないサンドイッチにかじりついた。
「まーお姉様ったら・・・でもこの食べかけのサンドイッチ・・・わたくしの手に持つこれは・・・お姉様との間接・・」
「やめい」
いつもの美琴の怒号が響いた。

「聞きましたわよ」

突然の声に三人ともびくついた。背後にいたのは扇子がトレードマークの・・・
「わたくし、この婚后光子(こんごう みつこ) もご協力いたしますわ」
「婚后さん、ありがとう」
「とーぜんですわ」
「どーでもいいですが、邪魔だけはしないでいただけます?」
「白井黒子さん・・それは誰に向かっておっしゃっているので?」
そんな事を言い合っているうちに昼休み終了のチャイムが鳴った。あわてて四人は片付けてそれぞれ教室へもどる。
「!」
そんな中何か視線を感じた美琴は立ち止まりあたりを見渡す。特に何も見当たらないため、後ろ髪を引かれながらも教室へ戻っていった。