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とある時空の並行旅人~パラレルトラベラー~

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T2 仁科 司


「ほんっと退屈しない街ね」
帯電した電磁力が体をかけ、周囲には煙のような湯気のようなものが立ち上っている。彼女の周りにはこげつき、こきざみに痙攣している男が数人コンクリの上に寝そべっている。いわゆる普通の不良だが、彼女は外見もよくいろんな意味で男が寄ってくる。もちろん女の子もだが。特に学校が終わった夕方など、ナンパ目的の不良がよってきて電撃を浴びせられると言うおなじみのパターン。すこしは手ごたえのある男なら彼女もわくわくするのだろうが、レベル5の彼女の敵になる男はそうはいない。
「うわー、派手だなー」
こんなとき決まって現れるいつもの男・・そう思って振り返った彼女の目に入ってきたのは、想像していた男とは違う別の男。やれやれと思いつつ彼女は返答する。
「なに?あんた、こいつらのツレ?」
寝ている男どもを指差す。
「ん?その制服・・荒八戸高」
ワイシャツの胸ポケットに刺繍されている校章で彼女は判断した。
「いや~、常盤台のエースの力を見たけど、あんまり大したことなさげだなーっと」
「あん?」
学生の言葉に少しイラっと来た彼女、美琴は学生をにらみつける。
「あんた、あたしにケンカ売ってる?」
学生は両手を前に出し首を振る。
「いやいや、レベル5様におそれおーい」
「あんた、いちいち言い方が気に入らないのよ」
体に電磁が走る。青白く電が体を駆け巡る。少し学生の口元がにやっとしたのを見た美琴は完全に頭に血が上った。
「あんた、今笑ったでしょ。大したことないか体感してみなさい!」
体から放電された雷は彼を直撃した。少々頭にきていたから、手加減をしているといっても先ほどの男どもより強めに放っている。
「こんなところでやったら、周囲は停電やら警備ロボがきちゃうぜ御坂さん」
学生は無傷でさっきの場所に立っていた。
「そんな」
美琴は前にもこんなことがあったのを思い出した。幻想殺し(イマジンブレイカー)の右手を持つ上条当麻とのやり取りだ。そのときとまったく同じ、彼だけが無傷な状態。
「ありがとさん、これがあれば大丈夫さ。それじゃ」
そういって学生は駆け出していった。
「ちょっとあんた」
その声をさえぎったのは、ルームメイトの白井黒子の声だった

黒子は白目を剥いた男をアンチスキルへ引き渡した。現場の後処理も含めてアンチスキルに任せ、美琴たちは涙子の提案で、いつものクレープ屋へ向かう事にした。
「ねえ黒子」
「なんですの?お姉様」
「やっぱりあれは・・・あたしのと同じよね」
「ええ。実際に見たわけではありませんが、恐らく周囲の痕跡から察してもお姉様と同じだと思いますわ」
「でも、御坂さんと同じという事であればバンク上のデータにも同じ能力者として登録されるはずですが、そんな人がいれば有名なはずですが聞いた事ありません」
美琴、黒子、初春の三人はその場に立ち止まって、自身の思考を巡らせる。
「あ、あの~考えてるのもあれだし気分転換てことで行きましょ」
「そうですわね。今はまだ情報もございませんし、あとで固法先輩とかにも聞いて見ますわ」
「わ、私も情報を集めてみます」
やっと三人がいつも通りの柔らかい表情になったのを確認した涙子は、さあといって初春の背中を押した。
「わわ、ちょっと涙子さん」
「御坂さんも白井さんも早く行きましょう」
美琴と黒子はお互い目を合わせくすっと笑い、二人の後を追った。

「ガズヤちゃん」
女性の悲痛な叫び。それとほぼ同時に車が急ブレーキ音、そしてゴムがこげた嫌な匂い。美琴たちは急いで声がしたほうへ駆け出した。そこは信号のない横断歩道だけがある道。歩道に座り込む女性。十字路には急ブレーキ音を響かせた車に、子供を抱きかかえる学生の男子。
「あ」
美琴を声を漏らした。
「お姉様、どうかしまして?」
「ちょっとね・・なんでもないわ」
美琴は黒子達と合流する前にあった学生男子だとすぐに気づいた。座り込んでいた女性が慌てて子供と学生のほうへ駆け寄る。車の運転手も慌てた様子で降りて出てきた。子供を叱り付ける女性、母親なのだろう。目には涙を浮かべ学生に頭を下げる。運転手も申し訳なさそうに三人に頭を下げた。学生は顔を横に振りながら、笑顔で話している。
「気をつけるんだぞー」
「ありがとう、おにいちゃん」
そういって母親と子供は歩いていった。運転手にも問題ないといった感じで体を無駄に動かしている学生の姿を美琴たちは遠目からみていた。学生の説得で納得したのか申し訳なさそうに車に乗った運転手は、もう一度学生に声をかけその場を後にした。
「大丈夫ですの?」
急に背後から声をかけられた学生は身をすくめた。後ろを振り向くとツインテールの髪の女の子が立っていた。
「びっくりした。だ、大丈夫です。心配ありがとう」
まだびっくりしているのか、彼はそういってぎこちない笑顔を見せた。ツインテールの彼女の向こうから近づいてくる三人の人。その一人を見つけた瞬間、彼は一瞬固まった。
「やっぱり、あんたさっきの」
今にも走って来そうな美琴よりもはやく、彼は駆け出した。
「さいならー」
「まてコラァー」
走り出す美琴。
「お待ちを」
黒子は腕を横に突き出し、美琴を制した。慌てた初春と涙子が駆け寄ってきた。
「お姉様、落ち着いてくださいまし」
「御坂さんどうかしたんですか?」
「御坂さんの知り合い?」
「いや、知り合いっつーかさっきみんなと合流する前に絡まれたっつーかなんというか」
「まぁ、お姉様。また私達に頼らずご自分で」
「だって風紀委員(ジャッジメント)が来る前に終わっちゃうんだから」
「それにしてもお姉様を相手にして無事とは、あのにっくき類人・・ってあら」
黒子は地面に落ちている黒い物に気がついた。
「これは」
その黒い物体を拾い上げる。
「白井さん、なんです?それ」
「はて?手帳?」
ひっくりかえすとそこには荒八戸高等学校と記されていた。
「生徒手帳ですわね。さっきの学生のでしょうか」
一枚めくると写真と共にその人物の名前が書かれていた。
「仁科(にしな)司(つかさ)。荒八戸高校2年普通科」
「ふーん、あいつ仁科っていうのね」
そういって美琴は黒子から生徒手帳を取り上げた。
「ちょ、ちょっとお姉様」
「これ、アタシから返しておくわ」
黒子も負けじと美琴から奪い取る。
「お姉様、これは落し物ですの。落し物は私達、風紀委員(ジャッジメント)がお返し致します」
これから美琴と黒子がいろいろやり取り始めた姿をみて、初春と涙子は
「またはじまったね」
「そうですね」
いつもどおりの光景に少し苦笑いした。