騒動の種は其処に有り
「それでも、僕はちょっと嫌だったの。留さんが用具の子達すごく可愛がってるのは知ってる。そのままの留さんでいてほしいとも思うけど、たまにはこっちも向いてくれないと、本当に他の人としちゃうよ?」
「・・・・」
「嘘。留さんがいる限り、他の人としちゃうなんてこと、絶対ないけど・・・。でもたまには、こっちのことも見て?」
「・・・ごめん、俺、伊作なら大丈夫だ、わかってくれるって勝手に思ってて・・・完全に俺の甘えだよな」
「留さんに甘えられるのは、嬉しいからいいよ。でも、たまには僕のほうも向くってことだけ、覚えておいて」
「わかった。ごめんな。文次郎殴りに行くのはやめるから、お前も作のこと殴りに行くなよ?」
「僕が後輩に怪我させるわけないでしょ」
「だな」
二人で抱きしめあって、仲直りのキス。
そしてその頃の天井裏では・・
『おい、寝るんじゃなかったのか』
『こんな面白そうなもの見逃すわけがないだろう』
というわけで、覗き組がいたのだが・・・
『文次郎。私に砂の吐き方を教えろ』
『仙蔵。あいつら殴ってきてもいいか?』
覗きに来たことを早々に後悔するだけであった。
翌日の用具委員会。
「作、一昨日、熱でなかったか?」
「はい。なんか俺、一昨日は今思い出しても恥ずかしいこといっぱいしちまって・・・すみませんっ」
今日はどうやら普段どおりの富松作兵衛のようだ。
「いいって。でもどうしたんだろうな?」
「さあ・・・自分でもよく分からなくて」
「なんか変なもんたべたのか?」
「そういわれても・・・」
一昨日の朝からの行動をじっくりと思い出してみる。
「あ、そういえば!朝、左門がどっかから飴玉拾ってきて俺にくれたんですよ」
「飴玉?」
「どうせいつもみたいに厠に行こうとして、どっか変なとこにいっちまったに決まってますけど」
「毎度毎度大変だな」
「もう慣れたんで。んで、その飴玉なんですけど、見た目は桜色でものすごくおいしそうなのに、食べてみたら全然甘くなくって薬みたいな味しかしないんですよね。でも、まさかあの飴玉もどきが原因なわけがないんですけど」
作兵衛の話を聞きながらふと留三郎も一昨日の朝のことを思い出す。
朝のトレーニングが終わって、伊作を起こしたとき・・
「そういえば一昨日の朝・・・伊作が・・・桜色の丸薬がなくなったって騒いでたような・・・」
「え、じゃあ俺が食べたのって・・」
間違いようもない。
結局この二人が巻き込まれる騒動の種はそこにある。
「おい、伊作ーーー!」
「おい、左門ーーー!」
二人の怒声が今日も平和な忍術学園に響き渡った。
おわり
作品名:騒動の種は其処に有り 作家名:律姫 -ritsuki-