ティル・ナギ
「何してんのー?集まって。用事ないならおやつでも食べに行かないー?」
「あ、ナギナギ。なあなあ、昨日の例の美少女。どっから連れて来たんだよぉ。もうここにはいねーの?ステージもうやんないの?」
「いねーよやらねーよ。」
シーナが聞くと、ナギはブスッと即答した。
おもわずプッと噴出して、ティルはナギにギロリと睨まれた。
「あっと、シーナ、お前しつこいよ?例の子だけど、聞いたところによると、特別公演だからあれっきりだとさ。もう既に別の国へ出発したらしいよ?」
ティルは慌ててフォローした。
シーナは残念がって続けた。
「えーなんだよー。あ、じゃあさ、ナギ、お前さ、女装してみない?あの子ほどじゃなくても、絶対いい線いくと思うんだよねー。俺、それでもイケる。いや、むしろそっちのがいいかも・・・」
「「「裁き・切り裂き・破魔」」」
3人の声が揃った。またもやホールはすさまじい有様だったが、怪我人はピクリとも動かないシーナを除いては誰一人出なかったらしい。
ってゆーか、破魔って・・・シーナを悪霊退散か・・・?まあある意味魔物だけどね・・・、ティルとルックは目を合わせて苦笑した。
「まったくー。とんだ目にあったよー。」
ホールから(シュウからとも言える)逃げて来た3人はレストランのテラスでお茶を飲んでいた。
「シーナはね・・・ほんと節操なしだね、アレは。」
呆れたようにルックが言った。
「シーナ?節操?ああ、俺に女装しろとか言ってたね。何考えてんだろ。いつものように女の子追っかけてたらいーじゃん。俺に女の格好させてもしょうがないのにねー?」
いや、間違いなく、しょうがなくない。
ティルとルックは同じように思っていた。
「?どうしたんだよ2人とも?っあっ、そうだ、ティルーっ」
「え、あ、何?」
「何、じゃないよ、よくも裏切ってくれたよねっ」
「えー?裏切りなんて大げさなー。僕はただ、皆の期待に答えるのも大切な仕事の1つかなって、ね?」
「ね?じゃねえ。くっそー。」
「どうしたってのさ?」
分かってはいたが、知らない振りをしてルックはナギに言った。
「だってティルってぱさー、俺に女のかっ・・・」
途中で自らバラしにかかっていると気付き、ナギは口を押さえてどんどん赤くなっていった。
そのかわいらしい様子に2人はかたまった。
「あーうー」
「ま、まあ、いいよ、別に。要はティルに恨みがある、と。」
「そこもスルーしてよ?」
ティルが突っ込んだ。
「どーしてくれよう・・・。うーん・・・あー、思いつかない・・・」
ナギは頬杖をついて仕返しについて考えていた。ティルは顔を近づけて頭を傾けて言った。
「だったら、もう、良くない?謝るからさ、ね?」
ナギはティルに気付いた。
「え?わっ、ちょ、近っ、顔、近いっ。」
そして慌ててティルの頭をぐっと押しのけた。
急に押されて首を反らされ、ティルは言った。
「いてて、ひどいよ、ナギ。」
ルックは考えるようにそれを見ていた。
ナギがため息をついて言った。
「あーもう、いいよ。でもさ、またあんなのさせるのに加勢したら、ぶちのめすからね、ティル。」
「それは怖いね?はーい、分かりました。」
ティルはニッコリ笑い、手を上げて言った。
外見さわやかな様子だが、内ではずーとナギの女装姿をリフレインさせて楽しんでいるようであった。