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君はドレスで裸足のままで

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 ミュールを引っ掴んだイギリスが立ち上がる。無表情の彼は、何を考えているのかまったくわからなかった。不安を覚えはじめた矢先、身体が宙に浮く感覚。高くなった視界に驚くと、イギリスの顔が間近にあった。いわゆるお姫様抱っこというやつを、今自分はされているのだと気付くのに、少し時間がかかった。突然のことになにも言えず、呆気にとられていると「ちゃんとつかまってろ」、言われて日本は素直に首に手をまわした。そのままホールを抜けて、長い廊下をたどる。イギリスは相変わらず何も言わないから、日本も口をつぐんだままだ。廊下の突き当たり、用意されていた部屋のドアをカードキーで開けて、中に入るとようやく日本はベッドへと下ろされた。
「…パーティー、抜けてしまってよかったんでしょうか」
「どうせ誰も気付かねぇよ」
 イギリスは上着を脱ぎ捨て、ネクタイを緩める。日本も、やはり人の多い場所、それも異国の地となると緊張していたようで、どっと疲れが押しよせてきた。シャワーを浴びたらもう寝ようと、立ち上がろうとした日本を、イギリスが制す。日本が口を開くよりも先に、「妬いたんだろ?」、言われて先ほどのことを思い出す。この男は、知っていたのだ。日本が、イギリスは自分に気付いていないだろうと思って彼に投げ続けた視線も、嫉妬も呪いもぜんぶ。ずるい、俯くと、そんなのお前が一番知ってるだろ、と笑みを含んだ声がかえってきた。顔を覗きこんでこようとするので、日本は必死に背け続ける。
「なあ日本。抵抗しないってことは良いってことなんだよな?」
「はい?」
 とんと薄い肩を押す。完全に油断しきっていた日本は、ベッドに倒れこんだ。影が落とされ、イギリスが覆い被さっているのだと知る。その目は今度こそ、日本を見てはいるけれど、獲物を前にした狼のようにぎらぎらとしている。危機感を覚えた頃にはもう遅く、すり寄せるように首筋に顔を埋められた。肩を押し返してみるものの、女の日本が力で敵うはずがない。咽喉の奥でくつくつと笑う声が聞こえて、いよいよ逃げ場はなくなった。
「だいたいお前、気付くのが遅いんだよ。ドレスを贈った時点で気付けよな」
 耳元でささやかれた声は低い。ぞわりと背筋が粟立った。男が女にドレスを理由なんて、ひとつしかないのに。日本はとうとう覚悟を決めて、ぎゅっと目を瞑った。まぶたの向こうで、シャンデリアの光がきらめく。

20100601
『君はドレスで裸足のままで』