白い丘
オーロラをまとっているようだと、ティティスはその黄金聖闘士の姿に目を細めた。
「御不自由があれば、なんなりとお申し付け下さい。」
「ありがとう。」
静かなそこでは、地上とは違う音の伝わり方をするのだろうか、一言発した言葉は一瞬に波紋のように空間に広がり水泡がわれるように消えた。
ティティスも広間を下がる。
静かな、静かな世界。
彼方上方ではこの世界の天たる海底を支えているのだろうか、地上では雲の高さをも越えるだろう巨大な柱が窓から望む遥遠くに幾本もそそり立っているのが見える。
真にアテナがましましたのなら、もはや聖闘士に惑いはない。
真のアテナ。それは、青銅聖闘士たちが奉じてきた少女であろう。
───氷河。
生と死の境目でセブンセンシズに目覚め、師であるカミュを倒した愛弟子。
目覚めから先へ導いてやれなかった弟子の安否をふと彼は思う。
死からの目覚めを誘った、人魚の歌声がまた微かに聞こえて来た…。