【完全読み切り】道
でも、彼は少しさみしいようだった。
彼だって世界一のトレーナーを目指している。そうしたら、彼は、ホウエンにおさまっている場合じゃなかった。
そうした時、彼は、世界中の猛者が集まるカントー地方に旅立つことを思い立った。
あそこには、伝説の三人のトレーナー、レッド・グリーン・イエローがいるのだ。
でも、そんな彼が準備をしながら、ふと私の家に来た時、私に、彼は頼みをしてきた。
「ハルカちゃん、一緒にいてくれないかな」
今、私たち二人はトキワシティにいる。七人のジムリーダーを下し、最後の関門に来ている。
伝説のトレーナー、グリーンさんとの戦いが、始まる。
これが終わっても、まだ二人のこっているけれど。
彼ら全員を倒すと、そこで戦いは止まっちゃうのかな。もしそうだったら、また彼のあの姿を見ることになる。
彼にはずっと元気でいてほしい。だから、彼に最強になってほしいとは思えない。
でも、それは彼の夢に反することだ。そんなことを、彼のガールフレンドの私が願っていいはずがないよね…。
でも、彼には見透かされちゃったようである。
彼にその話をすると、彼は言った。
「僕が最強になったって、強いトレーナーがまた出てくる。名前を守るためにまた戦うことになる。…もう、落ち込んでいる暇なんてないんだ」
そして、一言。
「何でキミの気持ちを隠すの?」
「え…」
「僕はずっと言いたかった。キミはいつも何でも隠すよね。そして、吐き出せないからどんどん体にたまっていく。そうして自分で自分を傷つけている。そんな姿を僕は見ていたくないよ。ずっと、明るいキミを見ていたいんだ」
「…」
彼は急に手を伸ばした。
私の体が包み込まれる。
私は、こんな人に想ってもらえるなんて、こんなに素晴らしいことはないでしょう。
不意に、涙がこみ上げてくる。
「ユウキくん…でも、今は泣きたいよ…だから、このまま泣かせてくれる?」
すると彼は、私を優しく、しかし強く抱きしめた。