止まらぬ想い
自分たちは不幸になったりしない、きっと幸せになると世良はそう思っている。怖がらないで。自分を信じて欲しいと、願う。
「好き同士になったら付き合うのってあたりまえじゃないですか」
世良はそう訴える。堺は黙って世良を見つめる。悲しいような切ないような。でも、やさしい顔をする。
「当たり前じゃない。だめだよ」
そう言って肩を抱く堺の手はやさしい。堺の肩にもたれて世良は泣いた。
堺はずっと「だめだよ」と、ささやきながら頭をなで続けた。
しばらくして嗚咽が止まった世良に堺は
「顔を洗って帰れよ、みんなが驚くから」
それだけ言ってそっと離れた。
「送っていくか?」
玄関先で堺に声をかけられると、世良は黙って首を横に振る。
「告白して振られたばっかりなのに」
世良は泣き笑いの表情を浮かべる。
「かっこ悪いじゃないですか」
「泣きながら戻るんじゃねぇぞ」
世良は堺の言葉に笑ってうなずこうとして失敗した。
しかしこの日、泣きはらした顔のまま戻って来た世良を見て寮の中では小さな騒動になったらしい。
それを堺が知ったのは少し後の話である。
(To be continued…)