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すずき さや
すずき さや
novelistID. 2901
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西日射す窓

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「なーんか、世良の方が懐いているって感じだな」
「ですね」
 村越の短い返答に達海は「そうか。仲がいいねぇ」と、独り言をつぶやきながら村越の方へ向き直った。
「お前、ちょっと寂しいの」
 達海の言葉に村越は眉をひそめる。
「そんな怖い顔しなさんな」
 ベッドから立ち上がり傍らに憮然とした表情で立つ村越の肩をぽんぽんと叩く。
「ちょっと外でメシ食いながら次の試合の話でもするか」
 達海はにやりと笑うとジャケットを羽織り、村越の横を通り過ぎる。村越は黙って達海に従う。
「そうだ。村越が行く店決めてね」
 と、言いながら達海がドアを開くと後藤と出くわした。
「よ、後藤。これから飯食いにいかね」
「この前のカレーパーティみたいなのは無しだぞ」
「わかってるって」
 でも、後藤のおごりでと付け加える。
 達海の後ろから村越が出てくると後藤は少し驚いた顔をする。
「あ。村越もいたのか」
「ウス」
「そっ。監督、GM、キャプテンで語り合おうじゃん」
 場所のセッティングはキャプテン、GMは財布。俺は食うだけ。語り合うのはETU。
 達海は歌うように口ずさみながら二人を置いて廊下を軽やかに先導するように歩く。
「何、食いたいですか」
 数歩先の達海の背中に村越は声をかける。
「キャプテンにまかせた」
 任せられても、と村越は言いよどんだが、ふと堺の行きつけのレストランを思い出した。もしかすると、世良と一緒に食事をしに行くかもしれない。ふらりと三人で入って、堺をあわてさせようかと村越は思った。

「どうですかね」
 レストランの名前を後藤に言ってみる。
「うーん」
後藤は腕組をして考えてしまった。GMの財布ではきついのだろうか。
「意外性のある光景が見られるかもしれないですよ」
 村越の言葉に後藤は興味が出たのか「ふむ」と、短い同意をする。それが何かと聞かないところが後藤らしい。堺と世良が向かい合って食事をする姿を見て彼は何を思うだろうか。それにも興味がある。
 それより先を歩く飄々としたあの男がどんな顔をするのか楽しみだ。

「ははは」
 普段ならしないようなことをしている。村越は思わず声を出して笑ってしまった。堺には悪いがたまにはこういうのもいい。
 その声に達海は振り向くと不思議そうに村越を見る。
「なんか企んでるのか、村越」
「まさか。あんたじゃあるまいし」
 村越は笑うのをやめて達海を見返した。その言葉に達海は人の悪い笑みを浮かべる。
「まぁ。いいか」
 達海は大きく伸びをしながら笑い続けた。
「仲良きことは良き事かなってやつだな。キャプテン」
「そうですね」
 二人の視線がぶつかり合ったが、お互いどこまで知っているのか腹の探り合いをしても仕方がない。
 ここは黙って素知らぬふりをするのがいい、と村越は再び小さく笑った。
【了】
作品名:西日射す窓 作家名:すずき さや