コミュニケーション・ブレイクダンス
「ほらみろ、ろくなもんじゃねぇ…」
さっきまでの不機嫌を何処へかっ飛ばしたのやら、今度は機嫌良く笑う上司を睨め付けてハボックは低く唸った。
でも、と遠慮がちな小さな声が上からしてきたので、彼は視線をあげた。直ぐ傍らに立っていた鎧の中から、柔らかい少年の声がする。
視線を合わせるとどうも一瞬戸惑ったようだが、軽く頷いて先を促せばアルフォンスは小さく首を傾げたようだった。
「…でも、何か楽しそうですね、ハボック少尉」
「ホント。文句言ってるわりには」
「・・・へ?」
ちょっと待て、とか呼び止める間もなく、あー付き合ってらんねー、さっさと終わらせて出ようぜ、アル。なんてぼやきながら、くるりとエドワードは背を向けてしまった。
楽しそう?誰が?…オレ?
「うわー…」
何かヒトに言われると愕然とするもんだな、これは。
そう言えばあの時にもヒューズ中佐も何か似たような事言ってなかっただろうか。
何だかすごい色々なものを見失ってぼさっと突っ立っていると、背中にゴス、と衝撃が来た。通りすがり様ブレダがツッコミを入れていったようで、そこで漸く我に返る。
ああ、集合?
大佐の机の前に広げられた地図の周りに集まっている所に、フラフラと自動的に足を動かして近寄っていきながら、もう無意識の行動で懐から煙草を1本取り出してくわえる。
火を付けようとしてライターを弾いた途端、
ゴッ
あり得ない勢いで炎が立った。
「ハボック少尉、集合は迅速に」
・・・仕掛けた張本人は涼しい顔で地図に視線を落としたままだ。
他のメンツはそっちに気を取られていたようで、誰も大佐の火遊びに気付かなかったらしい。
というかいつの間にしてましたっけ、発火布。
つけて一瞬で半分以下になってしまった煙草を未練たらしく一息吸い込むと、大きく息をついた。
「Yes,Sir…」
ああ、もー考えたくないけど。
「・・・もしかして染まってんのかなぁ、オレ・・・」
作品名:コミュニケーション・ブレイクダンス 作家名:みとなんこ@紺