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【サンホラ】覚醒夢

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遠くに漆黒の双剣を持った男が見える。一瞬だが、確かに視線が交差した。深い紫の瞳だった。即座に自分の相手が誰なのかを理解した。
 牽制するように馬を返す。だが、視線はほとんど離れない。不自然に見詰め合ったまま、互いの敵を斬り殺しながら距離を取った。
 男が何かを呟いた。彼の瞳から激しい怒りが湧き上がる。その激情をぶつけるように後ろから襲い掛かってきた兵士を斬り捨てる。
 私も雷槍を持ったまま男を見据え、名乗りをあげた。その名前は、はっきりとレオンティウスを名乗った。
「望むところだ!」
 男が叫び、互いに馬を蹴って走り寄る。黒き剣と雷槍がぶつかり合う。青銅と鉄の鈍く甲高い音が響く。何度も打ち合わせているうちに短い音が続く。まるで歌でも歌えというように剣戟は合奏を奏でる。
 その様子を、私はどこか遠くで見ていた。
 私はこの男を知っている。こんな憎悪で色取られた表情以外をちゃんと知っているのだ。だが、それが何時のことなのか分からない。
 そして、何度かの拮抗した力に焦れるような思いがする。この男は強い。ここで倒さなければ、二度と倒せない。
 一旦離れた。互いに何事かを叫んだが、よく聞こえなかった。
 ざわざわと、ささくれ立つような感覚がする。この先に恐怖している。
 女性の悲鳴が上がった。その悲鳴は何かを叫んだが、私の耳はしんと静まり返って、言葉として私に届かなかった。目の前に現れたのは母だ。
 一瞬にして思い出した。この男はエレフだ。私の可愛い、愛する弟だ。同時に、湖に捨てられたミーシャが見えた。そして私が殺した兄も見えた。
 落雷に貫かれ、母は何かを呟く。私も誰かの名前を呟いた。それすら耳に届かなかった。悲鳴をあげた。

作品名:【サンホラ】覚醒夢 作家名:十色神矢