your little light
「聞けば、違いがわかるかもしれないから」
「うんと、えぇと……」
「ほら、早く」
ソファから身体を起こして姉に近づけば今更頬を紅く染めて視線をそらされ、ベラルーシはむっとして、さらに身を乗り出した。邪魔な髪を払って、もっともっと顔を近くへ寄せていく。雪のように白い肌。兄とベラルーシより明るい色の髪。目の色も明るい青。でも髪質は兄に近く、すこしぱさぱさしたもの。
「あ、枝毛」
「んもうっ」
こつん、とぶつけた額は、ひんやりとしていて気持ちよかった。
「姉さんってば」
「……ちょっと、待って。心の準備!」
「何を今更」
「いいから」
そうしてそれまでひまわりを抱えていた両腕はベラルーシの身体に回され、今はただ服を隔てただけですぐ近くにある姉のあたたかくやわらかい身体に包まれ、胸に守られた心音が小さく聞え、姉はその言葉を再び口にした。すきよ、ベラルーシ。誰よりもすき。世界で一番すき。ご丁寧に付けられた最上級を示す形容詞に、ベラルーシは息を呑まずにはいられなかった。気の効いた返事が思い浮かばない。無論、姉がそれを求めていないことは分かっている。それでも、流れる沈黙を自分から破りたかったのだけれど、結局沈黙を持ち込んだのも、連れ去ったのも姉そのひとだった。
ね、ベラルーシ、と姉が耳元で囁いた。
「お誕生日、おめでとう」
「姉さんもね。昨日、だったけど」
「ううん。ありがとう。ベラルーシに言われると、うれしいわ。……ロシアちゃんに会いにいこうか」
「今は、行きたくない。こんな顔は見せられない」
「じゃあほとぼりがさめてから……あ、もしかして、お姉ちゃんになら見せられる、とか?」
「姉さんのそういう自己中心的な考え方には、うんざりよ」
「えぇー!」
でも、ひまわりはわたしが渡す。そう主張すると、姉はくすくす笑いながら、うん、とうなずいてくれた。擦れた髪と布の感触が、すこしだけくすぐったかった。
作品名:your little light 作家名:しもてぃ