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雨が降ったら会いましょう。

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その名前を呼ぶと同時に、少年の澄んだ湖面のような瞳からはぼろりと大粒の涙がこぼれ落ちて、滑らかな頬を伝って落ちる。それをああ、綺麗だと臨也は見つめて、息をのんで、それからはいて。
「臨也さん、臨也さん、いざ、や、さん・・・!」
教えたはずのない名前を呼んで、帝人が臨也を抱きしめた。冷たい冷たい体に、ほのかな熱が、体温が、帝人の髪がさらりと頬に当たって、凍りついた臨也の感覚を呼び起こしていく。
「み、かど、く・・・!」
「知ってますから!」
叫ぶように言って、帝人は傘を放り投げた。そのまま両手でぎゅうっと臨也を抱きしめて、強く、強く力を込める。
「知ってますよ、そんなの、池袋に住んでいたら誰でも目撃するでしょう、あんな派手な喧嘩とか、噂とか。ネットだってあるのに、なんで隠せると思ってるんですか!」
「だって・・・っ」
「折原臨也、情報屋。新宿に住んでる。悪魔だとか冷徹だとかえげつないとかいろいろ、言われて、でも・・・でも、僕には優しかったから!」
ああ、どうしよう、どうしよう。
せっかくあきらめたのに、せっかく、勇気を振り絞ったのに。
こんな風に抱きしめられたらもう、抱きしめ返していいのかと思ってしまう。想っていていいのかと、そばにいて、いいのかと。
「優しかった、から・・・信じようと、おも、って・・・!」
「帝人君!」
泣かないで、と臨也は少年の小さな体を抱きしめた。ずっと、そうしたかった。抱きしめて、包み込んで閉じ込めて。このままずっと、臨也と言うカゴの中で彼を愛でることができたなら、どれほどに幸せだろうと。
「臨也さん。甘楽さんは、もう、いいんです。さよならしたから、だから、今度は」
ああ、望み通りの言葉を吐き出すならその唇だろう。
瞳が見たくて、ゆっくりと体を離して、帝人と目を合わせたら。


「ちゃんと、折原臨也を、僕に見せてください、よ」


水面はやっぱり澄み渡って、臨也の濁りなどすぐに浄化させられてしまうのだと、知る。泣きながら、それでも迷いのないその目に、幾度救われただろう。これから幾度、救われるのだろう。なんと答えればいいのか分からなくて、だから臨也は、目を閉じた。
愛する湖面に、ただただ祈るように、誓うように、唇を落とす。



この瞬間かけがえのないものを手に入れたのだと、魂が震えた。