鬼の腕
新八は動揺した様子を見せまいとわざと軽口をたたいた。沖田は新八から離れて空のコップに焼酎とお湯を入れていた。後ろを向いたまま沖田が答える。
「腰紐はねえ、跡が残りにくいから使いやすいんですよ。持ち運びに手間もかからない。腰に巻いておくだけでいいんですからねえ」
表情の見えない沖田の無機質な声に新八はぞっとした。しかし、酒のコップを手に振り返った沖田は柔和な笑顔に戻っていた。
部屋の中には鉄瓶からシュシュシュッとお湯の沸く音だけが響き、外からは雨が屋根に当たる音が聞こえる。ネオンと火鉢の明かりが二人のシルエットを妖しく浮かび上がらせた。
「夜は長いですぜ、新八さん」
(夜に刀を振るな。囚われるぜ)
気がつくのが遅かったよ 銀さん
人斬りの腕は
僕を通して
あなたを捕まえに来たんだ
僕の弱さが
僕の未熟さが
人斬りの腕を
呼び込んだんだ
ごめん 銀さん
せめて今は精一杯の事をするから
あなたを護るために