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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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鬼の腕

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『真選組駐屯所』
銀時がそう書かれた看板を下げた門を足早にくぐる。
「おい!ゴリラはどこだ!」
大声で叫ぶと、近くにいた隊員が怪訝そうに見た。銀時の殺気を感じたのだろうか、隊員達は木刀や刀を握り直して遠巻きに囲んだ。
「出てこい!ゴリラ!」
緊張の漂う屯所の敷地内に声が響いた。
「うっせーよ、ここは動物園じゃねえぞ。ゴリラなんているか」
すると騒ぎを聞きつけたのか、屯所の奥から土方がくわえ煙草でできた。
「おめえ、新八に何した」
「あん?言ってる意味が分かんねえな」
土方は本当に知らないという様子だった。
「じゃあ質問を変える」
ギリッという音が銀時の腰の辺りから聞こえた。木刀を挿したベルトが悲鳴を上げた音だ。
「お前の側にいつもいる番犬はどこにいった」
銀時は木刀を腰から抜いて土方にその切先を向けていた。
「真選組の一番隊長を番犬呼ばわりたぁ、聞き捨てならねえな」
土方はくわえていた煙草を地面に捨てると足で火を消した。
銀時は無我夢中だった。沖田が追いかけているのは分かっていたが、新八がここに来るとは思えない。しかし思いつく場所はここしかなかった。
「あの狂犬は、どこへ向かってるんだって聞いてんだよ」
銀時が殺気立つ。
久しく触れなかった殺気に土方はゾクゾクしていた。ここ数日この男の情報を集めるために色々骨を折った。近藤にはあまり言えない事もした。昨日、昔攘夷志士だった男を捕まえて半殺しの目に遭わせたのは、今この銀髪が狂犬と呼んでいた少年だった。
「白夜叉」
不意に呼ばれた銀時の顔から殺気が消え、その代わりに丹田に気を溜める様に腰を低くしてうなった。
「あいつはどこだ」
「仕事の事については言えねえなあ」
土方が刀に手をかける。
「新八が飛び出していった。その後をお前の番犬が追いかけていったのを見た」
土方は沖田があの時言った言葉を思い出していた。

(土方さん、新八さんを落とすなら、今がチャンスですぜぃ)

土方の顔にうっすらと狼狽の色が表れた。
「坊主、どこへ行ったか心当たりはねえのか」
「とぼけるんじゃねえ!お前らが知ってんだろうがぁ」
銀時は木刀を振り上げ土方の方へ飛びかかった。周りにいた隊員が銀時に向かって刀や木刀を差し向ける。土方が腰の物を抜き銀時の木刀を防いだ。
「落ち着け!みんな手を出すな」
「早く言わねえと、その首へしをるぞ」
一触即発の事態に門の方から声がした。
「何か元気な声が聞こえるなあ、トシ」
近藤が外出から帰り門から入ってきたのだった。土方を見据えたまま銀時が言い放つ。
「新八に何かあったらお前らを許さねえ」
近藤が銀時と土方の両方を軽く見て少しにやっとした。
「とりあえず二人とも中入れや。旦那さん、大分混乱してるみたいだ」
どこかのんきな声で近藤が促した。土方に笑いながら言う。
「トシぃ、おめえまた何かやったか?」
「いえ、何も」
土方は近藤の目を見てはっきりと言った。近藤が手招きをしながら屯所の中へと二人を促すと銀時と土方はその後ろについて部屋へと入った。
「で、どうした」
銀時は近藤の前であぐらをかいて座り、左手に木刀を握りしめている。
「あんたの所の狂犬二匹が新八をあおった」
「トシ、どういう事だ」
土方も左手に刀を握っていた。
「近藤さん。こいつは昔、攘夷志士だった」
銀時を前に土方がまっすぐ言葉をぶつけた。銀時はぐっと声を詰まらせる。
「関係ぇねえ。俺はただの万事屋だ」
「桂と高杉と同門だ」
近藤がじっと銀時を見据えている。自分が土方のために手に入れた資料は下っ端の古い名簿だけだったが、あれからそこまで調べるとは、と感心する様に笑った。どうやって調べたかだいたいの察しはついていた。近藤はこの銀髪の男が言った言葉を思い出し苦笑した。
(狂犬か。なるほどな)
銀時が近藤をにらんでいる。何を言われてもその目をそらす事はなかった。
近藤がそれに答える様に銀時の目を見て言った。
「万事屋の旦那、俺たち真選組の仕事は・・・」
その言葉に銀時が素早く反応する。
「幕府のイヌにご大層な仕事なんかあるのかい」
銀時は落ち着いた声で言った。土方の右手が刀のツカに向かう。
「口に気をつけるこったあ、白夜叉さん」
銀時の右手も木刀を握っていた。近藤がふうっとため息をついて言った。
「国を護る事だ」
「うるせえ、だったら早く新八助けろ!」
銀時が木刀に手に握ったまま片足をたてると、それに素早く反応して土方が刀を抜く。
一触即発の空気にも近藤が動揺するどころか、二人のやり取りを楽しげに見ていた。
緊張の糸を切ったのは若い男の声だった。
「近藤さん」
すっと障子が開いて若い男が外で座っていた。
「沖田さんの居場所が必要ですか?」
銀時が声のする方へ顔を向けると、その男は微笑んでぺこっと頭を下げた。半分だけ顔をあげ、上目遣いで銀時の方を見ている。
「てめぇ」
その男の顔ははっきりとは覚えていなかったが、派手ないで立ちですぐに分かった。
あのときぶつかった小銭男だ。
「おまえも真選組か」
にやっと笑って近藤の方を向いた。
「山崎、総悟の居場所がわかるのか」
「多分あそこだと思いますよ。ねえ土方さん」
「・・・あすこか」
土方が口をゆがめて唸った。銀時はその言葉を聞いて部屋を飛び出し、大声で叫んでいた。
「おい。早く案内しねえか!!」
銀時は山崎と呼ばれた男の顔を見て、もう一つ思い出した事があった。
腹が立ってしょうがなかった。
(やり口が陰湿だぜ)
「タイヤの代金は、てめえらにまわしておくからな!」
作品名:鬼の腕 作家名:きくちしげか