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みとなんこ@紺
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いつもいつでも

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「ねぇ・・・」
『ああ…』
「・・・ボクたち、このクセもーちょっとどうにかしたほうが良いかなァ・・・」
『・・・そうだな・・・』

そこら中に散らばるカードの中に、向かい合って無造作に座り込んむ双子のような二人は、お互いに顔を見合わせて同時に息を付いた。

昨日、新しいブースターの発売されたM&W。二人で交互に引いたところ、面白そうなカードをいくつか手に入れた。明日が休みなのを良いことに、いそいそとあーでもないこーでもないと二人して新しいデッキの構築にいそしんでいた訳なのだが・・・。
取り合えず始めたのは夜8時くらいだったような気がする。一度咽が乾いたといって飲み物を冷蔵庫から攫いにいったのは、日付が変わるか変わらないかくらいの頃だった。
・・・なのに。
どうして気がついたら朝日が昇ろうとしているんだろう。
「・・・今日、土曜日で良かった」
『まったくだ。流石にちょっと眠いな』
「寝ちゃおうよ、このまま。そっち行くね」
『ああ』
「じゃ、ちょっと待っててね」
調整したデッキとサイドボード。入れ替え候補のカードをそれぞれ机の上に。
残りはいつものあの箱へ。
「ごめんね、起きたらちゃんとなおすから」
手を合わせて、ピョコ、と頭を下げてオヤスミナサイ。

「おまたせー」

パタパタと足音高くやってきた遊戯を出迎えたのは、珍しくももう一人の遊戯の大アクビ、だった。
「・・・ホ、ホントに眠そうだねー」
「・・・・・・まで・・・」
「え?」
「相棒が来るまでは、起きてる・・・」
「・・・って、もう一人のボク?」
・・・ずるずるずる、と身体が傾いで、凭れていた大きなクッションに埋もれてしまった。すでに半分以上意識がないようだ。いつもはすべてを見透かすような鋭い視線も、圧倒的な存在感もすっかりナリを潜めてしまって。あとに残るのは・・・。
ほら、と気だるい動作で促す手が自分を探して宙をさまよってる。その手を取って、片手で遊戯も引き摺ってきた柔らかい毛布に包まって、同じようにポテ、と隣に倒れこむようにして寝転がる。
深く、息をついて。
「・・・・・・ここに、いるよ。もう良いから、寝よう?」
「・・・ああ・・・」
すぐに、深く穏やかな寝息が聞こえてきた。
こんな風に目前で即寝入る彼を見るのも、珍しい。・・・というか初めてだ、きっと。
何となく得したようなそんな気分になって、自然と頬が緩むのを止められなかった。
「おやすみ、もう一人のボク」
小さく、小さく、ささやいて。
そう。取り合えず、おやすみ。






それが、金曜の夜のハナシだ。






「・・・えー・・・と・・・」
・・・本当は適当なところで起きるつもりで。
折角の休みだし、誰か捕まえて新しく構築した新デッキの調子も確かめてみようと思ったのに。

・・・のに。

「嘘だぁ・・・」
しばらく呆然としていたようだが、外の状況を漸く知覚したらしい。
「パズルの中で寝ちゃうとだめだねー・・・」
遊戯は毛布に包まったままの身体を起こして、思いきりのびを一つしてパタン、とまたその場に伏せてしまった。
「・・・一応起こそうとはしてみたんだがな、オレも」
斜め上からぽそり、と控えめに降ってきた主張に遊戯は薄く片目を開けた。
手を伸ばせばすぐ届く距離。隣に腰掛けたもう一人の遊戯はいつから起きていたのだろう。今は埋れるほどのクッションに凭れかかったまま、膝に置いた本の頁を繰っている。
「良く寝てたな」
「うー・・・」
返事を返すのもまだ億劫そうだ。
ころころと転がったままの相棒を見下ろして、もう一人の遊戯は僅かに苦笑を浮かべた。
・・・相棒の寝起きの悪さは折り紙つきだ。

もともと遊戯は眠りが深いらしく自発的に起きない限り一旦爆睡体勢に入ったが最後、めったな事では目を覚まさない。
勿論昨日(正しくは今日の昼)もそうだ。
母親が食事だと呼ぶ声も完全無視。
その声で目覚めたもう一人の遊戯もみかねて起こそうとはしてみたのだが、・・・片割れがあまりにも幸せそうにぬくぬくとシーツに包まっている手前、結局起こしそびれた。挙句、いつの間にかつられるように2度寝の憂き目にもあってみたり。


で。


次に目覚めたら夜だったわけだ、見事に。
そして寝すぎたためか転がっていても一向に眠くもない。
丸一日完全昼夜逆転状態だ。しかも昼間の時間はすべて睡眠に費やした。
「こうしてみるともったいないねー・・・」
「有意義、とも言いがたいしな」
「・・・睡眠不足は全然解消されちゃった、けど」
もう一人の遊戯はまぁな、と短く答えてページを繰る。
対して片割れはまだ起きる気にはならないのか、身体の下でダンゴ状態になっている毛布を伸ばしてかけ直してみたり。
「取り合えず、明日も休みで良かったな」
ペラリ、と薄っぺらい紙の音。
もそもそと身じろぐ音。
「誰か明日あいてないかな~?」
「城之内くんは?」
「またバイトなんだってー」
「忙しいんだな。ここしばらくずっとだろう?」
「休みに遊んでないよねー・・・ちょっと寂しいな~」
しゅん、としおれかけた遊戯にちらりと視線を落とすと、彼は小さく笑みを浮かべた。
毎日学校で会っているというのに、これだ。
学校でいつも顔あわせているのでは、全然足りないらしい。
もっとも、相棒の主張としては「顔を合わせる」と「会う」では随分と違うらしいが。

・・・もとい。

「杏子もバイトだって言ってたよな?」
「うん・・・本田くんもね。獏良くんはネットTRPGのオフ会だって言ってたし」
「そういえば御伽もついて行ってるんだろう?」
「うん。噂を聞きつけたネットの人から、新進気鋭の若手ゲームクリエイターの意見を是非聞きたいとかって。それで獏良くんに」
「白羽の矢が、か。あそこ結構話が合うみたいだしな」
「やっぱり、作り手同志だからなんじゃない?」
「そうだな」
ペラリ。
もそもそごそごそ。
「・・・・・・。」
「・・・相棒」
「んー・・・?」
「…読みにくいぜ」
「そーかな…?」
僅かに苦笑が含まれたような声がすぐ近く、すぐ上から降ってくる。少し低めの良く通る声が耳元を撫でて行く。目を閉じてそれを聞くのは何だか気持ちが良い。
文句をつけるほうも、受ける方も笑い混じり。
何となく、ほわほわした気分は伝わってきて、お互いになんだか柔らかい気分になってくる。
悪くない、かもしれない。こんなときも。
「いいね、キミの膝枕。何か、得した気分?」
もう一人の遊戯は何を言ってるんだか、と言わんばかりの苦笑を浮かべたが、ぽんぽんと軽く頭を撫でていく手はうらはらに優しかった。
「あ~・・・もったいないな~、折角なのに眠くない~」
「あれだけ寝てたのにまだ寝るのか?」
「うー・・・」
・・・なんだか本当に不服そうだ。
「ホントに眠くなんないや・・・どうしよう」
別にどうもすることもないんだが。だんだんと小難しい表情になってきた相棒が、ぽそ、と呟いたのをうけて、もう一人の遊戯は何事か思いついたのか、僅かに唇の端を上げて笑うと本を閉じて脇へと退かせた。
「?」
「・・・そんなに暇ならちょっとオレに付き合わないか?」
「・・・え?」
作品名:いつもいつでも 作家名:みとなんこ@紺