【完全読み切り】淨
人間は勝手なものだ。自分たちの利益のためにほかの生物のことなど、まったく気にかけない。
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ミナキは、スイクンを追い続ける傍ら、水棲生物を守るNPO団体に募金をした。
水がきれいになるとスイクンが現れないかもしれない。でも、人間が水を汚していいわけはない。そんなふざけた道理が通用するか。
世界は人間だけのものじゃない。この地球に住むみんな、たとえそれがバクテリアみたく微小の生物であろうとも、ここに住んで、ひとしく恩恵を受ける立場にある。
だが、さらにミナキは幻滅させられた。
そのNPO団体が、実際には受け取った寄付金を着服していることがわかったのだ。
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「マツバ…人間っていったいなんだろう」
「う〜ん…分からないけれど…少なくとも捨てたもんじゃないと思うよ」
「! なんでだい?」
「だって、そういう悪人もいれば、君のような奴だっているわけだろ?みんながみんな、悪人ではないさ。だろう?」
親友がこの男でよかった、とミナキは思った。
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「スイクン…」
ミナキ青年は追い続ける。伝説の水ポケモン、スイクンを。
そして、追い求める。みんなが笑って暮らせる、どんな生物も等しく暮らせる世界を。