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犬飼いたい!

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 彼女はエプロンにいるもう一匹を抱き抱えれば、なぜだかその子を僕の手に持たせてきた。眠いのか、犬特有なのか。おそらく両方なのだろうけどほんわかと暖かかった。下手したら片手の平に乗ってしまいそうな子犬が生きているのだと改めて思い知らされた。
「……ねぇ、半兵衛」
「なんだい」
「…………凄く、飼いたい」
 子犬の頭に手を乗せたまま、こちらを見てくる慶次くんに苦笑せざるを得ない。
「別に構わないよ」
「本当か半兵衛? 嬉しいねぇ」
 ねー。と、手の中にいる犬へ話し掛けている素振りなんとも可愛らしくみえた。
「じゃあ、二匹とも」
「……それは、やめてくれ」
 わからなくはないが、生き物なんて飼った事のない自分としては荷が重いと拒否すれば、彼はどちらを選んだらいいか悩んでいるのか、僕の腕にいる子と自分の腕にいる子を代わり番こに見比べていた。
「……一匹はまつさんの所で飼ってもらいなよ」
「それはいいね、半兵衛! 今すぐ姉ちゃんに連絡を……」
「しなくても、目の前にいるよ」
 ほら、と近くのゲージ前に男女を指さしてやれば彼はこそこそ近付いて、呼び寄せてきた。
 聡明そうな顔をしたまつさんに、その夫は幸せそうに此方へと笑いかけてくる。
「やはり犬は可愛いでこざいまするね。犬千代さま、慶次」
 その台詞にまつさんが犬を愛する理由が分かった気がした。旦那の名前に犬、の一文字が入っているのだ。
「……なぁ、姉ちゃん」
「なんでありまするか?」
「この二匹可愛いんだけど、両方は買えないから一匹は姉ちゃん家で飼ってくれないかい?」
 彼女は腕を組んで考えた後に、構いませぬ、と決断し、夫の方も賛同するように笑っていた。
「じゃあ、決定だねぇ。店員のお姉さん、購入手続きを踏んでもいいかい?」
「は、はい……!」
 完全に蚊帳の外にいた店員の方はあたふたしながら、資料を取りに行くのだろうか小走りに裏方へ消えていった。

「……ところで慶次くん、名前はどうするんだい?」
「えぇっと。夢吉とか、いいんじゃないのかな」
 この後店員が来るまで僕らは僕らで、夫妻は夫妻で名前を悶々と考えているのであった。
作品名:犬飼いたい! 作家名:榛☻荊