【完全読み切り】拐
その時、騒ぎに幹部クラスのトレーナーが来たようだ。まともにやりあえば、簡単にやられてしまうことは見えている。
「…」
彼は、己のプライドは優先しないことにした。
「万事休す!」
彼は、ヒカリの体を抱き上げると、そのまま走りだした。一緒に走るゴウカザルに、追手をあしらってもらいながら、走っていく。
ちょうど知り合いがそこにいた。
「ハンサムさ〜ん!!」
「おおっ!?キミは…」
「ちょっとこの子の錠を解く鍵探してるんですけど〜!!」
「…これが入ればいいんだが…」
ハンサムの手には鍵がたくさんある。ありすぎて正解がわからない。片っ端から差し込んでいく。
後ろのゴウカザルが限界だ。
「早くしないと…」
その時、ガチャンという音がして外れた。
「よっしゃあ!」
後は、逃げるだけ。追っては、入り口にいた国際警察に任せて、とりあえず、ビルを出る。
「ここまできたらこっちのもんよ!!」
彼は自分思っているポケモンで、すべての敵を蹴散らした。
すぐさま、国際警察が逮捕に向かう。
安堵の状態で、へたれこむ彼に、ヒカリが話しかけた。
「なんで、来てくれたの?」
「何でって…お前が好きだから」
「!!」
ヒカリはジュンの言葉が呑み込めないようだった。しかし、何度か深呼吸をすると、彼にいきなり、抱きついた。
「待ってたよ…あなたのその言葉」
その瞬間、彼は、何でもっと早く自分の気持ちに気づけないんだろうと、自分を責めた。