リオ・ナユ
その時ずっと抱きついてテッドを見ていたナユが悲しそうにうるんだ目で言った。
「・・・テッドさんは僕のコト、嫌いなんですか・・・?」
テッドは思わずドギマギしながらしどろもどろになった。
ナユはテッドの胸に顔をうずめて赤くなりながら言った。
「僕、テッドさんが好きなんです・・・。テッドさんになら、何されても、良いです・・・。」
テッドは内心でぎゃーっと叫んだが、もはや声も出ない。
顔色も青いのか赤いのか分からない。
体が硬直してしまった為目線だけでまず見えたのが、あらぬ方向を見て無視をきめ込んでいるルックである。
次に見たくねぇと思いつつ見てしまったリオは、悪魔のような笑みを浮かべていた。
「テッド?ちょっと、城の裏にでも行こう(逝こう)か?」
リオがテッドの肩をつかんで言った。
テッドには地獄への招待にしか聞こえない。
「お俺は何もしてねぇぇぇっ。カイリッ責任持って・今すぐ・迅速に・どうにかしろォォォ。」
「あーそうだねぇ。・・・。っあ、そうだ、回復魔法使えばいーじゃ・・・」
なんでこんな事気付かなかったんだという風に手をポンッと打ってカイリが言いかけると、リオとルックが最後まで聞く間もなく、“優しさのしずく”、“癒しの風”と即座に呟き、ナユに放った。
優しげな光に包まれた後、ナユがふと我に返った。
気付けば自分は青い顔をしたテッドに、これ以上ないという位にギューっと抱きついている。
しばしの間の後、本日二度目となるナユの絶叫が城中に響き渡った。
その日、ホウアンのところを訪れるナユの姿が見受けられた。
たまたま怪我の薬を貰おうとやってきたフリックが、丁度内容を少し聞いてしまった。
出直そうと戻っている時、ホールの例のいつもの場所(その場所の本来の担当者は相変わらずムスッとしている)にいるリオに声をかけた。
「おい、リオ。ナユはどうかしたのか?なんかホウアンに病気じゃないかって相談してたんだけど、妙な内容でな。」
「・・・立ち聞きかい?」
ルックが言った。
リオ、カイリ、テッドもフリックのほうを見た。
「いや・・・、薬を貰いに行った時にたまたまあいつがいてな。とりあえず出直そうと出てきたんだが・・・。」
「ふーん、で、妙な内容って?」
リオが聞いた。
「あぁ、なんでも、自分は夢遊病者か多重人格者か何かじゃないかって言っててな?ふざけてんのかって思ったけど声が真剣そうだったんでそのまま部屋を出たんだが・・・」
4人は顔を合わせた。
笑うところか哀れむところか判断に苦しむ。
とりあえずフリックには、ナユが間違いなく勘違いしているから問題ないと伝える。
フリックは、それならいいんだ、と言って去っていった。
その後正しい情報がナユに伝えられた。
「最近アレに避けられてるような気がするんだけど?」
「・・・そりゃ、まぁ、なぁ?お前の場合、部屋に入んなきゃいいんじゃね?さすがに寝てる最中の寝ぼけ癖に関しては、誰もどうしようもないしな?出来れば避けたいとか思うんじゃね?あいつなら。」
リオに言っているテッドに、カイリが続ける。
「俺もなんか最近ナユが口きいてくれないんだけど、なんでかなー?」
「・・・当たり前だろう?」
首をかしげるカイリに呆れたようにテッドが言った。