リオ・ナユ
理由
そのままあれほど嫌がっていた格好の事も忘れて突進するナユ。
とりあえず訓練所までガンガン進んでいった。
なんだっていうんだ、ほんとに。訳が分からない。
いつだってムダにいじめ倒してくるくせにあの反応は何。
「ていうかナユ、そろそろ休憩にしてくれ。」
フリックが困ったように言った。
「へ?」
鬱憤晴らしのように取組をしていて、気づけばまわりにはへばっている兵士の山。
「あー、そうですね・・・。じゃあ休憩。ていうかちょっとなまってるんじゃないですか?ルカを倒したからって油断しすぎなんですよ。」
「いやいや、お前がやりすぎだろ。なんかその格好になって、動きまで猫のように敏捷になったんじゃねえか?ただでさえお前さんはすばしっこいのにとてもじゃねえがついていけねえよ。」
ビクトールが呆れたように言う。
「ビクトールがとろすぎるんですよ。もうちょっと早く動いても罰はあたらないと思いますが。」
「まあ、確かにお前はちょっと重すぎだな。ちょっとは減量したらどうだ?」
ナユの言葉にフリックも同意する。
「うるせえ、俺はこれでいいんだよ。それにしてもナユ、お前その格好、いつまでしてんだぁ?」
「・・・好きでしてる訳じゃありませんよ、僕をなんだと思ってるんです。とりあえずジーンさんに妙な紋章をとってもらうまではどうしようもないんです。」
「リオが喜ぶだろう?」
「は!?」
フリックの言葉に、ナユは睨むように聞きかえす。
「な、なんだよ・・・。いや、あいつ、猫、好きらしいからさ。たしか昔、グレミオがそんな事を言ってたしな。」
グレミオ・・・たしかずっとリオのそばにいたお付きの人かなんか・・・?
フッチも言ってたし・・・やはりリオは猫が好きなのか?
だがそれならなんでああもそっけない・・・?
「・・・舌うちされましたが?」
「おかしいな・・・確かにそう言ってたんだがな。」
フリックが首を傾げている。
なんか、もう、どうでもよくなってきた。
「殺戮魔が猫が好きか嫌いかとか、もう、どうでもいいです。じゃあ僕はそろそろ仲間集めにでも行ってきます。」
「「て、その格好でか!?」」
「・・・やはり気持ち悪がられますでしょうか?」
「いや・・・。だがちょっとまぁ、やめとけ。どうしても行かんとならんような事以外、大人しく城内にいるこったな。」
ビクトールが笑いながら諭すように言った。
「明日からまた遠征ですが・・・」
「そういやそうだったな。それならなおの事、今日は休んでおけよ。わざわざ明日から疲れるってのに、今日まで疲れる必要はあるまい。」
フリックも今日は外出はやめておけ、と言った。
まあ確かにフリックの言う通りだし、それにこの格好でうろうろするのも情けないし、と思い、とりあえずしぶしぶと自分の部屋にまたもどってきた。
軽くかいた汗を流すにしても、この格好で浴場に行くのはなんだか嫌だ。自室にはシャワー室もあるし、と思いつつ部屋に入った。
「おかえり。」
へ?と思い声のした方を見れば、笑ってるのか怒ってるのかがまったくもって不明なリオがベッドのふちに座っている。
「げ。」
「何その反応。失礼だね?」
「う、いや、えっと、あ、そうだ、猫!!シュウの猫はどうしたんですか?」
「・・・ああ。その辺の奴に渡してきたよ?なぜ?」
「え、いえ・・・。・・・えっと、あの・・・怒ってるんですか?」
先ほどリオの部屋から出て言ったときに思わず吐いてしまった捨て台詞を思い出した。
ナユは基本丁寧な口調である為、リオもそうとう珍しかったのかもしれない。寝ているとばかり思っていたのに。
「ああ、人をいきなりバカ扱いしたやつね?怒ってる?僕が?不思議なだけだよ。大人しく出ていけばいいものを、余計な事言ったものだね?訳を言ってもらおうか?」
「だっ、だって・・・」
「だって、何?」
相変わらず何を考えてるのか分からない黒い笑顔でニッコリとリオが聞いた。
「ていうかあなたこそ何なんですか!?あなたの反応が分からない!!」
「・・・ああ成程そういうこと。ていうかいつも僕が貴様をかまうと怒るくせに?なんだ、やっぱりかまって欲しいの?」
ナユの逆切れで理由を判断したらしいリオにニッコリと言われ、ナユは赤くなりながら口をパクパクさせた。
耳と尻尾が垂れ下がる。
それを見たリオがまたため息をついて俯いた。
ため息とか、やはりそんな反応を珍しく思っていると、俯いたリオの口から、低い声で、ちょっと来なよ、と聞こえた。
「はぁ・・・?」
怪訝に思いつつ、ナユが近づくと、リオはいきなりナユの手をとり、そのままベッドに押し倒した。
「ちょっ、いきなり何するんです!?」
「いきなり?いきなりとはごあいさつだね?貴様がそんな格好をして僕の前をうろついたんだろう?変に切れて捨て台詞残したまま出ていったんだろう?遠征ってことで、わざわざ化け物相手に発散してあげたってのに。」
「え?」
「貴様にとっては残念だろうが、もう抑えないよ?貴様は明日から遠征だし、動物虐待も好きじゃない。だのに煽るような事したのは貴様だからね?」
「ええ?って、ちょっ、いつ僕が煽ったんですかっ・・・」
「絶えずね。せっかく無視してやろうとしていたのに、貴様こそ、バカだね?」
「なっ・・・ちょ・・・やめ・・・」
「ムリ。手加減、出来ないから。」
なにがムリ、だ、しかも手加減出来ないって・・・と言おうとしたが出来なかった。
キスされそのままリオの舌が差しこまれた後、つかまれていた手が離されてもナユはもう抵抗できなくなっていた。